溶接の仕事 後編|ジュエリー・DIY・航空宇宙…“魅せる溶接”と専門職たち

溶接は、見た目と精密さでも勝負できる!

溶接といえば、鉄骨や造船などの「ごつい現場」を思い浮かべる人が多いかもしれません。でも実は、ミリ単位の繊細な作業や、デザイン性を重視するアート系の仕事もあるんです。

さらには、航空機や発電所、水中での作業など、特殊で専門性の高い分野も。「鉄を溶かしてくっつける」という根本は同じでも、ジャンルが変わるだけでまるで違う世界が広がっています。

今回はそんな「魅せる」「極める」タイプの溶接の仕事をまとめて紹介します!

アークくん ジュエリー溶接|ミリ単位の芸術作品

高級ジュエリーの修理や制作に使われるのが、レーザー溶接や精密TIG溶接。素材は金、銀、プラチナなどの貴金属で、1ミス=数万円の損失…なんてことも。

作業は顕微鏡をのぞきながら、0.2mmのビードをルーペ越しにコントロール。火花を飛ばすというより、光で溶かして繊細に接合するイメージです。

技術だけじゃなく、美的センスや手先の器用さが問われる分野。ジュエリーショップのバックヤードや専門工房での仕事が多く、男女問わず活躍できます。

アークくん アート系・家具溶接|”魅せるビード”の世界

近年人気が高まっているのが、アート・インテリア系の溶接。鉄や真鍮、ステンレスを使って家具やオブジェを製作する現場では、ビードも“見せる仕上がり”が命。

特にTIG溶接の細くて均一なビードは、アート作品との相性バツグン。焼け跡や溶け込みの質感もあえて残すことで、作品に“味”が出ます。

造形作家やクラフト作家の中には、美術大学出身の人も多く、「職人」よりも「アーティスト」的な感覚が重視される場面もあります。

アークくん DIY溶接|趣味でも本気!

最近では、個人で溶接を楽しむDIY愛好家も増えています。ホームセンターで買える100Vの半自動溶接機やTIG機を使って、バーベキューコンロ、キャンプ用ギア、アイアン家具などを自作する人も。

溶接機メーカーも、初心者向けのコンパクト機種やYouTubeでの解説動画を出していて、個人でも始めやすい時代になりました。

ただし、家庭での溶接には感電・火災・有害ガスといったリスクもあるので、十分な換気や防護具は必須。趣味でも“本気”でやらないと危ない世界です。

アークくん 航空・宇宙溶接|国家レベルの精密作業/

航空機のエンジン部品、ロケットの構造体──ここでの溶接は究極の精密作業です。扱う材料はアルミニウム、チタン、ニッケル合金など、非常にデリケートで高価なもの。アルミニウム合金の一種の超々ジュラルミンなんて材料も使ったりします。

TIG溶接はもちろん、電子ビーム溶接やレーザー溶接といった超高精度の技術も導入されていて、作業環境はクリーンルームや無酸素環境のことも。

ミスがあれば、飛行中にパーツが脱落する可能性もある。だからこそ、JISだけでなくメーカー独自の資格やNASA認定などが求められることもあるんです。

技術力+知識+メンタルの安定性。すべてが揃ってこその世界です。

アークくん 発電所溶接|国家インフラを支える裏方

原子力、火力、水力、地熱。いずれの発電所でも、配管や熱交換器など多くの部材が溶接で繋がれています。しかも、それらの接合部は「一度作ったら交換できない」ことも多い。

だからこそ、発電所で働く溶接工には、国家資格や現場独自の施工試験が求められ、検査も超厳格。配管の内側までX線でチェックされたり、施工記録が数年保存されたりと、まさに“プロ中のプロ”の世界です。

ちなみに、原子力系では放射線管理区域での作業もあるので、放射線管理手帳が必須。服装も完全防護が基本です。

アークくん 水中溶接|”見えない場所”で命をつなぐ

映画の世界だけじゃない、リアルに存在する水中溶接士。港湾施設、橋脚、海底パイプラインなどの補修・新設に携わります。

作業方法は「ウェット溶接」と「ドライ溶接」に分かれていて、ドライ溶接では水中に気密チャンバーを作って内部を空気で満たすなどの特殊設備が必要。

酸素濃度、水圧、潮流などあらゆる条件が影響する過酷な環境。溶接技術だけじゃなく、潜水士資格や高い身体能力も必須。しかも、現場によっては海外出張や船上生活になることも。

報酬は高いけれど、それだけの覚悟と訓練が求められるプロフェッショナルな世界です。

アークくん プラント・石油・高層建築|過酷な現場での専門技術

発電所に並んで、高難度かつ高単価の現場として知られるのが、石油プラント・化学プラント・高層建築の溶接です。

とくにプラント現場では、ステンレス・チタン・モネル合金などの特殊材質の溶接が多く、現場での姿勢も「立向」「斜め上向」「天井向き」など超難易度。

高層建築では、高所作業と正確なジョイント溶接の両方が求められ、常に命綱・火災対策・落下物対策がセット。暑さ・寒さ・風など自然との戦いもあって、慣れないと本当にキツい。

でも、こうした現場をこなす経験は、どこへ行っても通用する職人力になるんです。

 

【結び】魅せる・極める。それもまた溶接の道。

ここまで紹介してきた仕事は、どれも特殊で専門的で、だけど確かな魅力がある分野ばかり。

ビードの美しさにこだわるアート系。精密さの極致を求める航空宇宙。見えない場所で命を支える水中溶接。どれも簡単じゃないけれど、突き詰めるほど面白い世界です。

「現場は無理だけど、溶接には興味ある」
「アートやデザインと結びつけたい」
「趣味からはじめて、いつか本業にしたい」

そんな人にも、溶接の仕事にはちゃんと活躍できるフィールドがあります。

好きなこと × 技術力
この組み合わせは最強です。

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私は溶接の仕事を始めて20年が経過しましたが、まだまだ勉強中の身です。それに加え無礼な表現もあるかと思いますが、溶接職人さんから日曜溶接のお父さんまで幅広い方々に閲覧していただけたら幸いです。


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