溶接の仕事 前編|製缶・配管・鉄骨・造船など“現場系”を一気に紹介!

溶接の仕事って、一言で語れない!

溶接って、なんとなく「鉄をくっつける仕事」というイメージがあるかもしれません。でも実際には、使う機材、材質、作業環境、そして求められるスキルまでもが、現場によってまったく違うんです。

たとえば、配管を溶接する人とジュエリーを溶接する人では、使う溶接機も違えば、現場での服装だってまるで違う。つまり、「溶接の世界には、20通り以上の働き方がある」と言っても過言じゃないんです。

今回はそんな奥深い溶接の世界の中でも、特に「現場系」と呼ばれる分野にスポットを当てて紹介します。製缶や配管、橋梁や鉄骨、造船に高圧容器まで。どれもハードだけど、やりがいバツグンの仕事です。

アークくん
製缶溶接|図面通りにつくる組み立てのプロ

タンクやダクト、機械のフレームなど「箱型」、「缶体」などの構造物を製作するのが製缶の仕事。図面を見て、鋼板を切って、曲げて、くっつけて。工場の中でコツコツ組み立てていく仕事だけど、一般的な溶接工って大体ここに属するんじゃないかな。でも実はすごく奥が深いのです。

まず必要なのが図面を読む力。三面図から展開図を読み解き、材料をどんな順序で加工・溶接すれば歪まずに作れるかを考えなきゃいけない。現場でよく言われるのは「仮付けが製品の8割」ってやつ。仮付けがうまい人は、完成品もピシッと仕上がるんです。

溶接方法は主にTIGとCO₂。厚さ1.2mmの薄板から16mmくらいの中厚板まで幅広く、ビードの均一性や角度の正確さが求められます。材料に線を引くケガキや墨出しも仕事のうち。とにかく精度重視、段取り命のジャンルです。

アークくん
配管溶接|中が命!内部が命の精密仕事

「中を見せられて恥ずかしい配管はダメ」──配管溶接の現場でよく言われる言葉です。

水、空気、ガス、薬品、スチーム…配管の中を通る“モノ”によって、求められる溶接の内容が全く変わります。特に高圧配管ともなると、内面のビードひとつで寿命が決まる世界。外見はピカピカでも、中がぐちゃぐちゃなら意味がない。

配管溶接に多いのはTIG溶接。ステンレスがメインで、鏡面仕上げのような内面ビードを求められることもあります。だからといって油断は禁物。被覆アークや半自動が使われる場面もあるし、狭所での作業になるとオールポジション(立向・横向・天井向け)対応が求められます。裏波溶接と呼ばれる高度な技術も当たり前のようにマスターしなければいけません。

資格も必須。JIS Z 3821や管工事施工管理技士などの認定があれば現場の信用度はグンとアップします。

アークくん
橋梁・鉄骨溶接|大物を組む豪快な現場

「これぞ現場!」というスケールの大きさを感じたいなら、橋梁や鉄骨工事の溶接がオススメです。何トンもある鋼材をクレーンで吊って、空中で合わせて、どっしり溶接。まさに「鉄と汗の勝負」。迫力ある溶接外観は時に感動すらあります。

鉄骨建方では、まず柱・梁を仮ボルトで仮組みしたあとに、本溶接を行います。アーク溶接がメインで、建物の構造的な要所に当たる部分は「完全溶け込み溶接」が求められることも。強度が命なので、見た目よりも内部品質が大事。でもやっぱり、ビードがきれいに出てると気分がいい!

現場は夏は灼熱、冬は極寒、高所作業も日常茶飯事。だけど、その分「これ、自分が組んだやつ」っていう達成感はハンパじゃないんです。

アークくん
造船溶接|デカさ・厚さ・体力勝負!

溶接の仕事の中でも、特にスケールがぶっちぎりでデカいのが造船溶接。船の外板、バルクヘッド(隔壁)、キール(竜骨)など、どの部材もとにかく重くて分厚い。

材料は9mm、12mm…20mmなんて当たり前。使用する溶接機もCO₂やアーク溶接の大出力タイプで、時には多層盛り溶接で肉厚を確保する必要があります。

また、海の上を走る船だからこそ、**超音波探傷(UT)やレントゲン検査(RT)**も日常的。とくに水密構造になる部分は、ピンホールひとつでも命取り。だから安全対策も徹底していて、作業前のKY(危険予知活動)は必須なんです。

ちなみに、作業中はとにかく「音がでかい」「振動がすごい」「暗い」ので、体力とメンタルの両方が求められるガチ現場です。

アークくん
溶接|やってみなけりゃわからない

「今そこにある鉄を、今ここで直せ!今すぐにだ!」って感じの緊急対応が求められるのが、現場溶接。

建設中の建物や稼働中の工場で、ちょっとした修正や後付けの加工が必要になったときに呼ばれるのが現場の溶接屋さん。クレーンが入らない、風が吹く、アースが取れない…でもやらなきゃいけない。段取り力と応用力が命!馴染みのメンバーで現場に行くならまだ良いものの、見知らぬチョイ悪ガテン軍団と組まされたりコニュニケーション能力も割と必要。一人親方ならなおさら監督とも上手くやっていかないとだしね。

設備が整っている工場とは違い、「道具は現場にあるもの」「材料も現場の余り材」なんてこともザラ。とにかく臨機応変にやりくりできる人が活躍できる世界です。

アークくん
高圧ボイラー・圧力容器|資格の世界

高温・高圧にさらされるボイラーや圧力容器の溶接は、知識と資格がすべて。

この分野では、溶接作業そのものが「資格保有者にしか許されない」と法律で定められています。特別ボイラー溶接士、普通ボイラー溶接士といった国家資格を持っていないと、スタートラインにも立てないんです。

しかも検査が鬼のように厳しい。X線検査、UT、PT…1本のビードに対して何工程もの非破壊検査が入るため、一発勝負のプレッシャーもあります。

だけど逆に言えば、この分野での経験と資格があれば、どこの現場に行っても重宝される「スペシャリスト」になれます。お給料・・・ 良いです。すごく。

【結び】現場系の溶接は、厳しい。でも面白い!

今回紹介した現場系の溶接は、どれも簡単にはいかない仕事ばかり。でも、そこには他の仕事では味わえない「達成感」や「誇り」があります。

重い鉄を動かして、火花を散らして、自分の手で作り上げていく。そのダイナミックさとリアルな緊張感こそ、現場溶接の醍醐味です。

次回の後編では、ジュエリーやDIY、航空宇宙など“魅せる溶接”や“専門職系”を紹介していきます!

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私は溶接の仕事を始めて20年が経過しましたが、まだまだ勉強中の身です。それに加え無礼な表現もあるかと思いますが、溶接職人さんから日曜溶接のお父さんまで幅広い方々に閲覧していただけたら幸いです。


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