被覆アーク溶接とは 

被覆アーク溶接は、被覆剤を塗布してある溶接棒と母材との間にアークを発生させて行う溶接方法です。
被覆剤は、塩基性(低水素系)と酸性(非低水素系)に二分され、非低水素系はさらに細かく、
・イルミナイト系
・ライムチタニア系
・高セルロース系
・高酸化チタン系
・酸化鉄系
などに分類されています。

被覆アーク溶接こそが溶接の王道

溶接にまったく関わりの無い人でも、溶接を頭に思い浮かべたらまずこれをイメージするでしょう。
建設現場などでパチパチパチッて光ってるアレですね。ちなみに被覆って言葉は付けずにアーク溶接またはアークと言う事が多いです。アークはどの溶接法でも起きる現象の事なので、アークと呼ぶのは本来ズレてる気がしないでもありませんけど作業者は「アーク」や「手棒」などと呼ぶ人が多いです。行くとこまで行くと「棒」と呼ぶ方々もいます。今後もっと略されて1文字になっていくのでしょうか。非常に楽しみです。

被覆アーク溶接のやり方は実にシンプル。溶接棒をホルダーに挟み、金属に触れさせるだけ。これでアークが発生して溶接開始となるわけです。後は筆で線を引くように手を動かしていけば、溶接棒が勝手に溶けていくので誰でも簡単に溶接できてしまうのデース。

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溶接棒をホルダーに挟むとこんな状態です。
クドいようですが、溶接棒を金属に触れさせれば溶接できちゃうんですよ。誰でもね。
ただ、確かに溶接棒さえ溶ければ溶接の形にはなるんですが・・

かなり慣れないと顔から笑みが消える事間違いなしのデコボコビードが当たり前、キレイな外観で溶接するにはメチャクチャ難しいのです!
家庭用アーク溶接機がホームセンターで1万円以下で売ってるお手軽さに対して、その難易度は最強レベルなんですよ!

何が難しいかと言えばまず溶接中の視界。煙はモクモクとド派手に出るわ、スラグと呼ばれる溶けた被覆剤が溶接ビードの上にドロドロ~っと乗っかっていて、どこを溶接してるんだか分かりにくい。溶接したい所から5mmくらいズレて全然違う所を溶接しちゃったなんて当たり前。(上手い人は1ミリもズレません)
次に言えるのが、溶接姿勢が床面になる下向き以外では、まともに溶接棒を溶かす事すら出来ない。溶接スピードがちょっと不安定になるだけで溶け過ぎたり全然溶けてなかったりでもう見られたビードになりません。
あとは、他の溶接方法に比べるとスパッタが飛散する量が多かったり、何百度もあるスラグが飛び散ったりするので、安全に作業するにはかなりの重装備になります。溶接なので真夏でも厚手の長袖は当然として、被覆アーク溶接の場合は皮のエプロンやアームカバーなど見ているだけで疲れそうな格好をしなければ安心して作業が出来ないのです。

何だか絶対にやりたくない溶接方法みたいになってしまいましたが、被覆アーク溶接にも素晴らしい点はいくつもあります。
特に優れているのは場所を選ばない溶接方法って事でしょうかね。
ティグ溶接や半自動溶接などはシールドガスを使うため、屋外での作業がちょいと大変だったりするんですが、この被覆アーク溶接ならばシールドガスを使用しません。被覆剤が溶けてスラグとなり溶接部を空気から保護してくれるのでシールドガスが必要ないのです。風がバンバン吹いていても大丈夫です。他にも、溶接のケーブルを伸ばすだけで高所でも広いフロアーでも簡単に移動できます。だから建設現場などでよく見かけるんですね~。

こちらは日本溶接協会の資格でもありますN-2Pです。
パイプの真下から登って溶接してるんだけどキレイですねー。このくらい安定したアーク溶接が出来たらどんな条件でも文句なしの溶接が出来そうです。

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被覆アーク溶接の熟練者になるには相当の努力とセンス、勘が必要です。

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私は溶接の仕事を始めて20年が経過しましたが、まだまだ勉強中の身です。それに加え無礼な表現もあるかと思いますが、溶接職人さんから日曜溶接のお父さんまで幅広い方々に閲覧していただけたら幸いです。


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