普通ボイラー溶接士 実技試験への挑戦2

 残り時間25分・・・

焦らない焦らない焦らない。時間は充分ある。普通にやれば楽勝だ。っても普通に出来るわけない。試験なんだもの。ため息をつく余裕すら無いほどの緊張感に覆われながらもやるしかない。やるしかないんだよ!超絶技巧立て向き溶接!(これは本人の想いであってアーク溶接としてはド基本です。) 

 すでに仮付け完了してあるテストピースを立て向き溶接用の冶具に固定します。ガタつかないように先の尖った三角形の鉄片2つをテストピースの後ろ側に打ち込むのですが、冷静さを完全に失っていた自分はこれを上から下方向に打ち込んでしまった。これは左右から打ち込むのが正解。上から打ち込んでしまったためにテストピースが垂直より手前に倒れる感じになってしまった。何、難易度上げてんだよ俺。あーこれじゃダメダメ!と頭では思ったにも関わらず身体は止まらない。頭の指示を無視して身体はもう次の作業を進めてしまう。そう、いわゆるこれがパニック障害ですw

 1層目開始。溶接棒3.2ミリ。電流140A。
立て向き溶接の場合、1本の溶接棒でテストピースの下から上まで溶接できません。7割くらい登った所で棒が無くなってしまいます。なので試験片として使わない部分、つまり曲げ試験では使わない捨ててしまう部分で棒を取り替えるのです。それはどこかと言えばちょうど半分地点。半分登ったら新しい溶接棒に取り替えるのが無難でしょう。なぜなら溶接棒が無くなりアークが切れてしまってから再スタートすると、どうしても溶け込み不良やスラグの巻き込みなど溶接不良を起しやすいからです。なのでテストピースの半分登った場所にしるしを付けておきます。石筆で線を引いてもいいし、溶接棒などを横向きに挟んで止めて置くのも溶接中に見えやすくて便利です。試験に自信がなかったら絶対やったほうがいいでしょう。

 試験場の溶接機は当然ながら電撃防止装置が付いているのでアークスタートがチョイ難です。新品の棒の一発目か棒の先が真っ赤に熱を持っている状態でないと上手くアークスタートできないのです。日ごろから当たり前の安全装置の付いている溶接機で作業している方なら問題ないのですが、自分は30年くらい昔の中古を5万円で買ってきた溶接機で練習していたのでそんなハイテク装置はありません。おかげて1発目のスタートが上手くいかず、母材に溶接棒がくっ付く→棒をむしり取る→新品の溶接棒を新たに使う→また母材に溶接棒がくっ付く→溶接棒を力の限りむしり取る→  の繰り返し。1層目スタートまでに10本くらい使ったかもw
実にリッチでセレブな作業なんですが試験ですからね。問題なし。なんとか溶接開始。

1層目の方法として自分が選んだのは、棒を左から右に流した後に上に向かってアークを少し離してまた左から右に振っていく登り方です。5ミリほど横移動した溶接を積み重ねていく感じです。動きが3角形になるように、オーケストラの指揮者が3拍子を指揮するように慎重に登っていきます。これで平らに近い溶接が出来ました。左右に振らず登っていくと溶接が尖がってしまって次の層で溶け込みに苦労するので理想は平らなビード外観のほうがいいです。

2層目。溶接棒4ミリ。電流135A。
少しだけ電流を下げました。10A下げれば溶け落ちの心配が多少減るのですが、溶け込みが心配で心配でw。だから5A。たぶん5A下げようが10A下げようが変わらないと思いますけどw気持ちの問題です。ここでも1層目と同じようにオーケストラの指揮者になりきって登ります。溶接がダラダラ~っと溶け落ちないようにスピードを調整しながら慎重に。上まで登ってスラグを取ると溶接の繋ぎ位置が半分より少し上だった事に気付く。まあいいか。電流そんなに下げてないから多分大丈夫。

3層目。溶接棒4ミリ。電流110A。
何を思ったか25Aの電流下げ。理由は自分でもわかりません。直感でしょうか。普通なら120Aでいいと思うのですが、頭と身体が完全に違う方向性で作品を仕上げようとしています。まぁよろしいでしょう。 ここからはアークを上に離さず左右に振って登りました。下向きと同じように開先表面から1ミリほど低い状態に仕上げるのがベストです。登り終わってスラグを取ると・・ 盛りが足りない!表面から2ミリはありそうなくらい盛りが低い! 電流の影響なのか運棒を焦って進めすぎたのか、とにかく問題大。次を仕上げ層と考えていたのに・・ さてどうする?

4層目。溶接棒4ミリ。電流105A。
電流の設定は適当です。身体さんが決めたみたいです。あーもう登るしかない。溶け落ちギリギリを狙ってなるべく盛りを多くしようと決め、これで仕上げを目標とする。開先より1ミリくらい幅広く登る登る登る。この層でなんとか終わりにしたい。もう1層盛る練習なんてした事ない。残り時間も気にかかる。いろんな事が頭に浮かびつつもようやく最頂点に到達。意を決してスラグを取ると・・  うわー微妙! なんとか1ミリくらいは余盛りできてるけどアンダーカットっぽい感じもする! 下向きと同じような出来栄え! どうしよう! もう1層か! 迷う!

試験官「残り5分ね」

わお! 冷酷にお告げをかまされた。確か試験の説明では溶接完了後にテストピースに刻印を打ってもらうまでが制限時間だったおぼえがある。これで終わりにしないと間に合わないか・・

試験官「これで完了?」

なんて質問してきやがるんだ!お前が決めてくれよ!と言いたくなる。残り時間も無いし、試験管の目にも完了してもいい出来栄えになっている(妄想)と判断して溶接完了としました。

       —-  溶接完了  —-

まだテストピースは熱いので閻魔様が舌を抜くのに使いそうなでっかいペンチみたいので刻印を打ってもらいに運びます。運ぶと近くに他の受験者のテストピースが置いてありました。なんか凄く上手く溶接してあるのがゴロゴロしている。眼中ねえよ。とにかくもう、試験が終わった事にホッとしました。後片付けをしてタバコ3本一気に吸い逃げるように帰宅。しばらくは合格発表を忘れる事に専念した。

 数十日後、ついに合格通知が届く日がきてしまいました。ポストに届いたんだからしょうがない。見るしかない。ハガキにはシールが貼ってあり、剥がすと結果が分かる原始的仕組みです。期待半分、不安半分でシールをゆっくりゆっくり剥がしていく・・・ 1ミリ剥がすのに3秒くらいのスピードで剥がしていく・・・ 合格って書いてあれ・・・

字が見えた!

「合」って字が見えた!!!

一気に全力でシールを剥がす

学科試験 合格

実技試験 不合格

オイオイオイ・・・・


   

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