普通ボイラー溶接士 実技試験への挑戦

 学科に合格した翌月に実技試験が行われます。試験内容は9mmSS材、下向き突合せ溶接(裏金あり)と立て向き突き合せ溶接(裏金あり)です。制限時間はテストピースに仮付けする最初のアーク発生から溶接完了後に自分の試験番号の刻印を記してもらうまでを1時間で完了させなくてはいけません。

 実技試験当日。学科の合格通知を受け取ってから3週間はみっちり練習してきたのである程度の自信はありました。しかし普段アーク溶接をほとんどしていないので少しながらの不安も消せません。もうやるしかないと自分に喝を入れ、試験会場に入りました。

 待合室のような場所に入ると5、6人の受験者がいた。まぁ、この人ら全て敵てすからね。挨拶なんか絶対にしないと心に決め、渋い顔つきで入室。大きな音でドカっと荷物を降ろし近寄りがたいオーラを全開に放出。この空間を支配しないといけない強迫観念がそんな行動に俺をさせたんだろう。見事に部屋の空気を支配した。

 その直後、ワイワイと大勢のグループが入室してきた。馬鹿デカイ声で笑いながら巨漢の熊みたいな奴が先頭で、その後ろには「総長」とか「大将」とかがあだ名に最適な金髪が続き、あと4人ほど上等スタイルで俺のテリトリーに侵入してきた。

 俺の支配タイム 00:00:08 小者は小者らしく、試験に意識を専念しようと決めた。

 10数名の受験者が集まった頃、受験者の確認や使用溶接棒の確認が行われ試験の説明が始まりました。このあたりから緊張感が高まってきます。自分は1つの溶接機に対して3番目の順番だったのでこの時点で2時間待ちが決定。緊張感が和らぎます。待ち時間は今日の試験で使うテストピースの準備や他人の溶接を遠くから観察するくらいしかやる事がないんで非常に暇です。頭の中で良い溶接のイメージを何度も何度も思い描いて時間を潰しました。

 そして自分の順番がきました。

まず仮付け。使用する溶接棒の太さは自由なので下向きでは全層4ミリの溶接棒にしました。ルート間隔を4ミリ開けて裏金と母材を溶接します。立て向きは1層目だけ3.2ミリの棒にしました。なのでルート間隔は3.2ミリです。この2枚のテストピースを最初に作ってしまいます。そして下向きから始めるのです。

 下向き1層目。電流200A。これは通常より高めの電流でしょう。通常は180Aくらいだと思います。溶け込みを考えて200Aにしました。めちゃくちゃ溶けます。おそらく溶けすぎで悪影響があるんだろうけど何が何でも200Aです。ウィービングはしないで、ガーーッ!と真っすぐに裏金を溶かしていきます。見た目的には安心できる溶接ができました。
 
 2層目180A。これも電流が違うだけで1層目と同じ感覚。ガーーッ!です。1層目の溶接で母材がすでに熱くなっているので層を重ねるごとに電流を下げないとダメなんです。スラグが開先表面の高さまでくるくらいの速度で溶接しました。1層目より運棒が不安定になりやすいので当然両手でトーチを持ち、歯を食いしばっています。
 
 3層目170A。次が仕上げ層になるのでここでうまく開先の表面より1ミリくらい低い高さまで溶接しなくてはいけません。盛りすぎて開先表面より高くなってしまうと仕上げ層でかなり苦労します。つまり外観が悪くなりやすいんです。綺麗な仕上がりを狙うには3層目が重要。でも試験ともなると緊張で狙い通りにいかないw ちょいと盛りが低くなってしまいました。

 4層目。これが仕上げ層になります。電流150A。1層目から3層目は溶接棒を寝かしてスラグが溶接方向に流れて来ないようにするのですが仕上げ層では溶接棒を起して(垂直ではないけど80度くらいかな)スラグを溶融池にしっかりと被せて進みます。さらにこの層ではウィービングで開先幅より左右1ミリ程度広く幅を出して溶接します。これが上手くできると溶接の表面はテカテカっと綺麗に光り、アンダーカットになりにくいのです。

さて、自分はこんな感じで出来たかと言うと・・

3層目の盛りの低さが影響してアンダーカット気味。それもいかにも試験片で取りそうな場所が1番ヤバイ感じ。おまけにスラグを上手く被せられずボコボコのギザギザビードになってるw もう1層溶接しようかかなり迷いました。でもアーク溶接の自信の無さ+多少のアンダーカットは許容範囲と聞いていたのでこれで下向きは完了としました。

ちらりと時計を見ると・・ あと25分! 

次は地獄の立て向き溶接です!!!!!!!

 
 

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