アンダーカットとは?現場で嫌われる“えぐれ欠陥”の正体と原因・対策
アンダーカットとは?
アンダーカットとは、溶接ビードの端、つまり母材との境界が“えぐれて”しまっている状態を指す溶接欠陥です。見た目では気付きにくいこともありますが、非破壊検査(PTやVT)でバレるとアウト。しれっとスルーしようとしても、検査員にバッサリ「これ不良ね」と言われる厄介なやつなんです。
たとえるなら、きれいに盛りつけたカレーの端っこだけルーがかかってなくて、ご飯がむき出し…そんな感じです。見た目が悪いだけでなく、強度的にも問題があり、疲労破壊の起点になる可能性があるため、確実に対処する必要があります。
アンダーカットの見た目と検出方法
アンダーカットは、ビードの端が母材側にえぐれているため、横から光を当てるとくっきりとした影が出たり、指でなぞると“溝っぽさ”を感じたりします。よくあるのが、すみ肉溶接とも呼ばれる角継手やT継手の外側ビードで、斜めにビードを盛っていくと母材上縁がえぐれやすい。トーチ角と加棒位置、ウィービングの幅などを経験を積んでさじ加減していくのが1番の解決策なんだけど中々難しい。
検査方法としては主に目視(VT)や浸透探傷試験(PT)が使われ、表面のわずかな凹みも見逃されません。溶接の外観検査において、アンダーカットの深さが0.5mmを超えるとNGという基準もよくあります(求められる検査基準は現場や規格によって差はありますが)。
主な原因は“溶かしすぎ”と“早すぎ”
アンダーカットが起こる原因は主に次の2つです。
原因 | 具体的な内容 |
---|---|
溶かしすぎ | 電流が強すぎたり、アークが母材側に寄りすぎて熱を集中させてしまうと、母材が必要以上に溶けて“えぐれ”になります。 |
移動が早すぎ | トーチや溶接棒の移動が早いと、金属を溶かしても十分な溶融金属が供給されず、えぐれた部分がそのまま冷えて固まってしまいます。 |
特に薄板や端部の溶接では、熱が逃げやすくアンダーカットが起きやすいため、より繊細な操作が求められます。
アンダーカットを防ぐには
アンダーカットを防ぐには、以下のような工夫が効果的です。
- 電流設定を適正にする(高すぎない)
- トーチ角度を母材に対して20度〜40度程度で試す
- ビード端部に少し時間をかけ、溶融金属を行き渡らせる
- 溶接速度をやや遅くして丁寧に仕上げる
- ワイヤ送給速度やアーク長を適切に調整する
- 結局の所、まずは電流を10A程度電流を下げる。変わらなければトーチ角、ウィービング幅を変える。
とくに半自動溶接(MAG/炭酸ガス溶接)では、トーチの振り幅とスピードを一定に保つことが重要。新人の頃はアンダーカット出しまくって、先輩に「そのビード、線彫りか?」なんてイジられることも…。
もし出ちゃったら…アンダーカットの修正方法
発生してしまったアンダーカットは、そのままでは合格にならないことが多く、修正が必要になります。軽度であれば上からもう一層肉盛りして埋める「追い盛り」で対応できることもありますが、溶け込みが浅いとNGになるケースもあるので注意が必要です。
また、溶接棒やワイヤを変えて、流動性の高い材料にして修正するという手もあります。重要構造物の場合は、修正後にも再検査が必要になることがあるので、できれば発生しないようにしたいところですね。
つまりは“きれいな端っこが品質のカギ”の意識で
アンダーカットは、溶接ビードの「仕上がりの美しさ」だけでなく、構造物の信頼性にも直結する欠陥です。派手な割れやブローホールに比べて地味ですが、しっかりとした技能がないと防ぎにくいのが特徴です。
きれいなビードの端を意識すること、それが品質と信頼の第一歩。地味だけど、奥が深い。だからこそ、ベテラン溶接工ほど「端っこ」を大事にするんですよね。