被覆アーク溶接とは?仕組み・特徴・TIGとの違いを現場目線で解説

被覆アーク溶接とは?

被覆アーク溶接(Shielded Metal Arc Welding、略してSMAW)は、いわゆる「手棒(てぼう)」の溶接。金属棒にフラックス(被覆剤)が塗ってあって、それ自体が電極としてアークを発生させる…という、とてもシンプルな構造の溶接法だ。

電源とアースとホルダー、あとは溶接棒があればできちゃうから、今でも建設現場や修理仕事では根強く使われてる。特に屋外や風のある環境でもアークが安定しやすいのが特徴。

仕組みと特徴|なぜ「初心者向け」と言われるのか

溶接棒を金属に近づけると、アークが発生して母材が溶けていく。棒の先端も同時に溶けていって、そこに被覆剤が焼けてガスとスラグを発生させて、溶融池を保護するという流れ。

操作自体は簡単なんだけど、実際はアークの長さ調整やスラグ除去、角度の安定など、意外と難しい要素も多い。だからこそ、「基本中の基本」として最初に教わることが多いんだよね。

使用される道具と材料|溶接棒の選び方も紹介

道具はとってもシンプル:

溶接機(交流 or 直流)

アースクランプ

ホルダー

溶接棒(被覆アーク棒)

溶接棒にはJIS規格で分類があって、E4303(通称:Z-1)やE4316(低水素系)など、状況や母材に合わせて使い分ける必要がある。

初心者にはZ-1が定番。アークスタートしやすく、クセが少ない。逆にZ-44(低電流でスパッタ少なめ)は上級者向けって言われることもある。

ホルダーに溶接棒を装着した状態
項目 内容
メリット シンプルな装備、屋外でもOK、コストが安い
デメリット スパッタ多め、スラグ処理が必要、スピードが遅め

スラグ除去は地味に手間だけど、その分「ちゃんとやった感」もある。しかも道具が少ないから、現場では「とりあえずこれで溶かしとけ」的な存在にもなる。

溶接棒の種類と被覆剤の分類

被覆アーク溶接は、被覆剤を塗布してある溶接棒と母材との間にアークを発生させて行う溶接方法。被覆剤は、塩基性(低水素系)と酸性(非低水素系)に二分され、非低水素系はさらに細かく、・イルミナイト系・ライムチタニア系・高セルロース系・高酸化チタン系・酸化鉄系などに分類されているんだ。種類が多いけど、用途に応じた適正な棒があるって事だよ。試しに種類の違う棒を1本づつテイスティングすると明らかに違うのがわかる。使用条件と棒の選定はすごく大事だから覚えておこう。試験にも出るよ。

それぞれの分類と特徴のまとめ

分類 系統分類 特徴
塩基性(低水素系) 塩基性 高靱性・低水素で割れにくい。主に構造物や重要部位の溶接に使用。
イルミナイト系 酸性 ビード外観が良く、スラグ剥離性も良好。汎用性が高い。
ライムチタニア系 酸性 アーク安定性が高く、溶接性良好。手棒溶接の一般的用途に多い。
高セルロース系 酸性 下向き・立向きなどの姿勢溶接に強く、根入れ性が高い。パイプなどに使用される。
高酸化チタン系 酸性 ビード外観が優れ、スパッタが少ない。溶接姿勢の自由度は低め。
酸化鉄系 酸性 アーク安定性に優れ、溶け込みは浅い。軽構造物向け。

TIG溶接との違い|使い分けのポイント

TIGと比べると…

項目 被覆アーク TIG
装備 シンプル 繊細・高価
操作 ワイルド寄り 精密作業向け
適所 野外・修理 精密・美観重視
初心者への難易度 最初は取っつきやすい 操作はやや難しめ

一番の違いは「棒が電極かどうか」ってところ。被覆アークでは棒が消耗品。TIGはタングステンを使うから減らない。つまり、操作性や考え方も全然違ってくる。

見た目に分かりやすく出る、被覆アークの“実力差”

正直、手元が命。アーク長さを一定に保つのがむずかしいし、ちょっとした角度ミスでビードが蛇行する。つまり、「腕がモロに出る」溶接法。どんな現場で使われているか

溶接棒の消耗も早いから、継ぎ足しのときにアークが乱れてNGビードになったり…。慣れるまでは「3本で1個きれいに仕上がればOK」とか、そんな感じだったりする。

被覆アーク溶接の外観
被覆アーク溶接での固定配管溶接 鬼ウマ

どんな現場で使われているか

鉄骨工事の現場

補修・メンテナンス

狭所・高所作業

屋外施工(風あり、電源不安定)

一言で言えば「設備の整ってない現場」に強い。TIGや半自動じゃムリでも、被覆アークなら何とかなる…って場面が、実は多いんだ。とにかく準備が楽。シールドガス不要。風お構い無し。悪条件でも出来るのが強み。

最後にひとこと|昔ながらの溶接に、あえて注目してみる

どんなに最新の溶接機が出ても、「被覆アーク溶接」は現場の最後の砦として残り続けてる。たとえば災害復旧とか、仮設の仕事、狭い場所での一発勝負。結局、信頼されてる技術って、最後は人の腕と道具のシンプルさなんだよね。

だからこそ、これから溶接を学ぶ人も、ベテランの人も、あらためて手棒に触れてみると「原点に帰る」気持ちになるかもしれない。手軽さから初心者がまず最初に学ぶべき溶接法でもあり、極めるには難易度の高い溶接法なんだ。