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TIG溶接とは?きれいなだけじゃない、「別格」と言われる理由

きれいなだけじゃない、「別格」と言われる理由を現場目線で話そう

TIG溶接って聞くと、

「ビードがきれい」
「職人っぽい」
「難しそう」

だいたいこの3つがセットで出てくる。

うん、間違ってない。
でも正直、それだけでTIGを語るのはもったいない。

TIGって
きれいだから使われてる溶接じゃない。

「それしか選択肢がない場面」があるから、
今でも現場で生き残ってる溶接なんだ。

今日はそのへん、
教科書じゃなく“現場の感覚”で話すよ。

TIG溶接ってどんな溶接?

TIG溶接(ティグ溶接)は、
タングステン電極からアークを出して、
アルゴンガスで守りながら溶接する方法。

電極は溶けない。
溶けるのは母材と、手で差し込む溶加棒だけ。

スパッタもほぼ出ないし、
スラグもない。

だから仕上がりは、
そりゃもうピカッときれい。

ステンレス
アルミ
チタン
薄板

このへんになると、
TIGの出番が一気に増える。

…ここまでは、
たぶんどこのサイトにも書いてある話。

でも、
TIGの本質はそこじゃない。

なぜTIGは「難しい」って言われるのか

よくある説明がこれ。

「両手使うから難しい」

半分正解。
でも、それだけなら練習すれば何とかなる。

TIGが本当に難しいのは、
同時に判断することが多すぎるから。

・溶融池の広がり
・母材とタングステンの距離
・アークの音やガスの乱れ
・棒の溶け方や棒を入れる量の見極め
・母材の反応

これを
全部同時に見て、判断して、手を動かす。

電流〇アンペア
棒〇ミリ

そんな数字は目安で必要だけど、実際はアークを出してすぐ判断しないとダメなんだ。
母材の溶けが弱いか?肉盛りが少ないか? などを瞬時に見抜いてやり方を変えないといけない。

もちろん溶接中も、
「このまま行くと溶けすぎるな」
「今、ちょっと我慢したほうがいいな」

ってのを
感覚で判断する世界になる。

この感覚を掴むのには年単位の時間と努力が必要になってくるし、これが苦手な人は向いてないって事になる。

TIG溶接が向いている人・向いていない人

観点向いている向いていない
作業スタイルじっくり丁寧早く終わらせたい
性格我慢強いせっかち
判断その場で考えるのが好きマニュアル通りが安心
評価仕上がり重視スピード重視
成長少しずつ上達したいすぐ結果が欲しい

「向いてない=ダメ」じゃない。
ただ、相性はある

TIGは、
我慢できる人ほど伸びる溶接。

半自動経験者がTIGでつまずく理由

半自動をやってきた人ほど、なんなら半自動がめちゃウマな人ほど
TIGで一回挫折するって話が多いんだ。

理由は溶接中の感覚があまりにも別モノだからなんだよね。

半自動溶接とTIG溶接の感覚の違い

項目半自動溶接TIG溶接
主な操作トーチ操作トーチ+溶加棒
判断基準溶け込み・スパッタ溶融池・色・音
進め方溶かして進む溶かしすぎない
失敗盛りすぎ穴・歪み
上達比較的早い時間がかかる

半自動は
「溶かして前に進む」溶接。進むスピードが早い!

TIGは
「溶かしすぎない」溶接。進むスピードが遅い!

ここを切り替えられないと、
ずっと苦しい。

TIGは屋内向き。でも現場では普通に外でも使う

TIGはガスシールドだから風に弱い。
屋内向きなんだけど、近くに扇風機とか、強風で窓全開なんてもってのほか。ちょっと風が当たるだけで、

・酸化する
・ブローホール出る
・ビードが荒れる

これは「まぁいいかー」には絶対ならないなら本気で気をつけないとダメ。

そんな風が天敵なTIGなのに外の現場仕事をTIGで行うってのも普通にあるから困るんだ。
現場は教科書通りにいかないから工夫の積み重ねで対応していく。

簡易的な壁を用意して囲う
シート張る
人が壁になる(気休め程度でも助かる時ある)

それでもTIGを使う理由は一つ。

気密性に優れたTIGじゃないとダメな工程があるから。
これよ、TIGの特別感。

「TIGだけは別格」と言われる理由

よく「TIGは別格」って言われるけど、
それって見た目がきれいだからじゃない。

手作業で、
アーク
溶加棒
トーチ
母材

全部を同時にコントロールしてる。

だから、
職人としての技量そのものが仕上がりに出る。

TIGが上手い人って、
他の溶接でも安定してるし、
現場でも「任せて安心」って扱いになる。

あとさ、
今はSNSで腰抜けるほど綺麗なビードを
普通に上げてる人がゴロゴロいる。

基準が青天井。

上手くて普通、
怪物級でようやく「すげー」って言われる。

なかなかシビアな世界。

相原から最後に

本音で言っちゃうと、初心者にTIGって全然やさしくない。

溶かしすぎて穴あく。
熱かけすぎて母材が歪む。
狙い通りに棒がつかない。
手が震えて思ったとおりに進まない。
仕事してるよりタングステン研いでる時間のほうが長い。

「今のいけたな」って思った次の瞬間に、
ビードがヨレて全部台無し、なんて普通にある。

それでもTIGやってる人、
なぜか現場から消えないどころか、TIGを覚えたいって人が多いんだよね。

理由はたぶん一つ。キレイなビードが作れる面白さにハマるから。

TIG溶接は、速さではなく「質」を求められる溶接。
だからこそ、誤魔化しがきかず、やればやるほど奥が深い。

ロボットやAIがどんなに進化しても、最後の仕上げや繊細な部分は、きっと人の手が必要になる。

もし今、「自分にはまだ早い」と思ってるなら、むしろチャンス。
いまから少しずつ触れておけば、数年後に「あのときティグやっておいてよかったな」って、きっと思えるからね。

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この記事の内容は、現場で長く溶接に関わってきた経験をベースにまとめてるよ。
「この人どんなキャリアなんだろ?」と気になったら、プロフィールで少しだけ覗いてみてね。