ファイバーレーザー溶接とは?進化したビームが現場にもたらす革新技術のすべて

「ファイバーレーザー溶接って、聞いたことあるけどよくわからない」
そんな方も多いんじゃないでしょうか。

実はこの技術、従来のTIGやMAGとは一線を画す“次世代型”の溶接方式。
しかも最近では黒皮の除去や、iPadでの自動設定など、驚くほどスマートな運用も進んでいます。

この記事では、現場目線と最新技術の両方から、ファイバーレーザー溶接の魅力を深掘りしていきます。

ファイバーレーザーとは何か?

ファイバーレーザーは、レーザー光を光ファイバーの中で増幅・伝送する構造をもつレーザー発振器。
従来のCO₂レーザーやYAGレーザーと比べて、小型かつ高効率なのが特徴です。

レーザー溶接の中では比較的新しい技術ですが、以下のような分野ですでに使われ始めています。

精密部品の接合(EV・医療・電子機器)

自動車や鉄骨部品の自動溶接

黒皮鋼板の表面処理(除去)用途

ファイバーレーザー溶接の特徴

ファイバーレーザー溶接には、以下のような特徴があります

高精度:ビーム径が小さく、極小スポットで狙った箇所をピンポイントで溶接できる

高速:出力の調整と移動速度の最適化で、同等の溶け込みを短時間で実現

低歪み:局所的な加熱で熱影響部が狭く、変形が少ない

長寿命・高効率:レーザー発振器の構造上、メンテナンス性も高く、電力効率にも優れる

これらの特徴から、手間をかけずに高品質な溶接が求められる量産現場や自動化ラインとの相性がとても良いんです。

タブレットで操作?スマート化する現場

最近の機種では、溶接条件の設定をiPadのようなタブレット端末で行うことができるものもあります。

操作はとてもシンプル。

材質(SUS304など)

板厚(例:1.2mm)
といった条件を選ぶと、機械側が自動で最適な出力・速度・アシストガスの種類を設定してくれます。

たとえば

> 板厚:1.2mm、材質:SUS304 → 出力:750W/速度:120mm/s/ガス:N₂

このように条件が自動計算され、作業者はジグの固定とノズル位置を合わせるだけ。
設定ミスやスキルの差を減らし、誰が使っても安定した品質が出せるのが魅力です。

黒皮鋼板の除去にも使える

ファイバーレーザーは溶接だけでなく、酸化皮膜(いわゆる黒皮)を除去する用途にも活用されています。

たとえば、SS400やSPHCなどの熱間圧延鋼板は、表面が酸化被膜で覆われていて、
従来はグラインダやディスクサンダーで除去するのが一般的でした。

ファイバーレーザーを使うことで、次のようなメリットがあります:

メリット内容
非接触でキズがつかない下地を傷めず、表面のみ均一に除去できる
粉じんや火花が出にくい安全性が高く、作業環境の改善にもつながる
自動化が容易ロボットと組み合わせることでライン対応が可能
除去後すぐ溶接可能一貫した加工プロセスが可能になる

TIG・MAGとの比較

項目TIG溶接MAG溶接ファイバーレーザー溶接
精密性
作業速度
歪みの少なさ
設備コスト×
自動化対応
黒皮対応×

ファイバーレーザー溶接の“現場感”がわかる動画3選

もうとにかく見てほしい。初見なら絶対驚く。わかりやすい動画を3つ紹介しますね。ファーバーレーザー溶接ってこんな感じなんだって分かると思うよ。
どれも短時間だから是非見てほしい。

🎥 ① 6mmアングル材の溶接(深い溶け込み)

厚みのある6mmアングル材でも、しっかりとした溶け込みが得られます。
ファイバーレーザーというと薄板専用のイメージがあるかもしれませんが、実は厚板にも対応可能。
照射ポイントも明確で、狙った位置にしっかりビードが形成されているのが分かります。

🎥 ② ファイバーレーザーの高速溶接

スピード感がファイバーレーザーの真骨頂。
この動画では、短時間で連続的にビードが形成されていく様子が見られます。
作業時間が短縮できるだけでなく、加熱時間が短いため熱歪みの抑制にもつながります。

🎥 ③ 黒皮・サビ除去(レーザークリーニング)

ファイバーレーザーは、溶接だけでなく黒皮やサビの除去にも活用されています。
火花が飛ばず、表面だけをきれいに除去できるので、作業者の安全性や作業環境の改善にもつながります。
前処理の手間が軽減されることで、後工程の品質安定にも一役買ってくれます。

ファイバーレーザー溶接あるある

あるある補足
見た目が綺麗すぎてミスに気づきにくいVT(外観検査)だけだと判断が難しいことも
作業が一瞬すぎて「ちゃんと溶けたか不安」になるでも測定すると意外とOKだったりする
ガスの種類で仕上がりが全然違う酸素・窒素・ヘリウムなど用途によって選定が重要

まとめ:ただの“未来技術”じゃない、もう使われてる

ファイバーレーザー溶接は、もはや研究所や大手企業だけのものではありません。
小規模な現場でも活用が進みつつあり、「黒皮除去から自動化溶接まで」を1台でこなす実力があります。

使いこなすにはコストや導入設計の工夫が必要ですが、
“次世代の溶接”を現実のものにしてくれる、確かな一歩であることは間違いありません。

TIGと比較すると使用できる場所が限られていて、まだどこでも使えるわけじゃないのが現状です。メーカーによっては遮光のパーテーションで囲った中でしか作業を認めなかったり、言い換えればレーザー光による安全面で慎重にならないとですね。でもこの先、この溶接法が主流になるかもしれません。だって凄いんだよホント。