サブマージアーク溶接(SAW)とは?仕組みと特徴を徹底解説
サブマージアーク溶接(Submerged Arc Welding, SAW)は、厚板構造物の製造現場で多用される高能率な溶接方法です。アークをフラックスの下で隠して行うこの独特なプロセスは、主に造船、橋梁、建築鉄骨、さらには高圧ボイラーや圧力容器のような安全性が重要視される分野でも活躍しています。
この方式では、粒状のフラックス(被覆材)を開先部にあらかじめたっぷりと散布し、その中でアークを発生させながらワイヤを溶かし、母材との接合を行います。アークが完全にフラックスに覆われるため、溶接中に眩しい光が見えることはありません。

サブマージアーク溶接の主なメリット
SAWは、一見シンプルながら非常に合理的で、熟練工の技術を補完する「装置による品質安定」が最大の魅力ともいえます。以下に主なメリットをまとめてみましょう。
メリット | 解説 |
---|---|
高電流が可能 | 一般的に1000A以上の電流で運用されるため、1パスでの大量溶着が可能。これにより肉盛り回数が減少し、作業時間を大幅に短縮できます。 |
深い溶け込み | 溶け込み深さが大きく、30mm程度の厚板でも1パスで十分な脚長を確保できる場合があります。 |
アーク光を直視しない | アークがフラックスに完全に覆われており、作業者が直接光を見る必要がないため、遮光面が不要になることも。 |
ヒューム発生量が少ない | フラックスがアークと溶融池を覆っているため、ヒュームの発生を大幅に抑制できます。これは作業環境改善に大きく貢献します。 |
高い自動化適性 | トーチの移動、ワイヤ送給、フラックス供給まで自動化されており、設定さえ正確であればオペレータは監視のみで作業可能です。 |
優れた外観と品質 | 電流・電圧・トーチ速度の条件が最適であれば、均一で美しいビードと安定した溶け込みが得られます。 |
このように、サブマージアーク溶接は大量溶接を効率よくこなしたい製造現場にとって、非常に理にかなったプロセスです。

サブマージアーク溶接の課題と注意点
一方で、SAWは全能というわけではありません。いくつかの明確な制約があります。
デメリット | 内容 |
---|---|
姿勢の制限 | フラックスが重力で落ちてしまうため、基本的に下向き(水平姿勢)の突合せ・隅肉溶接にしか対応できません。 |
視認性の欠如 | アークと溶融池が完全にフラックスで覆われているため、リアルタイムでの溶け込み状態の確認ができません。 |
継手精度の要求 | 開先の幅や深さにバラつきがあると、トーチは等速で進行するためビード形状が乱れやすく、欠陥の原因にもなります。 |
設備費用の高さ | SAW装置はトーチ、トラクター、フラックス供給装置などを含め高価で、初期投資が重くつきます。 |
つまり「誰でも簡単にできる自動溶接」とは言いきれず、事前のセッティングや溶接条件の最適化、材料の調整がきわめて重要になる方式です。

実際にやってみた体験談
ここからは、そんなSAWを実際に現場で使わせてもらったときの体験談です。
母材はSPHC、板厚22mm。直径1.5mにロール成形された円筒構造物で、1パスで脚長30mmほどの溶接を行いました。
見ての通り、盛り自体はできていますが、外観としては正直いまひとつ。ビード両端がややアンダーカット気味になってしまい、「もう少し電圧を下げるべきだったかな…」という反省点が残りました。
これは自分がやってみた溶接なんですが、参考にさせてもらった専門の職人さんのビードは、本当に波ひとつないツルッとした表面。比べてみると、自分のビードは明らかに「粗い波」が出ているのが分かります。品質自体はクリアしているものの、「ベテランの技」との差を痛感しましたね。
画像撮っていいか聞いたんですけど、表情だけで「んぁー!ダメに決まってんだろ!」と伝わってきて……この瞬間、「職人の目は口ほどに物を言う」ってやつを全身で理解しちゃったんですね僕。秒速であきらめましたよ。
ちなみにこの作業、「ちょっとやってみ?」という軽い一言から始まったものの、実は破材なしの一発本番。内心、手が震えるレベルのプレッシャーでした…。
しかも事前説明は超ざっくり。「この線に沿って行って、トーチは触っちゃダメ。じゃ、やってみて」的なノリ。何回聞き返しても要点が変わらない。どれだけドSなんですか。
でも、終わった後にまた表情だけで「今日は俺の奢り」と言ってる気がしたので流れで付いて行くと昼飯をごちそうしてくれたんですよ。……なんて良い人なんでしょう。表情で気持ち全部わかるよ。
まぁまぁ、というわけで、強制的にねじ込まれた形とはいえ、サブマージアーク溶接の奥深さと面白さを体験できて感動+多汗の貴重な時間でした!