現場で最も多く使われている溶接方法、それが「半自動溶接」。
鉄骨工場でも車体製造でも、トラック修理でも──この溶接方法を見ない日はないほど。
でも、「MAGとMIGの違いって何？」「なぜCO₂溶接って呼ばれてるの？」といった疑問を持ったまま作業している人も少なくないはず。
この記事では、半自動溶接の仕組みからガスの種類、トラブル対策までを現場目線で解説していくよ。
半自動溶接とは何か？
「半自動溶接」とは、手に持ったトーチからワイヤが自動供給される溶接方法のこと。
アーク操作は人が行うけど、溶加材（ワイヤ）の供給は機械任せ。これが“半”自動たる理由。
完全自動（ロボット）と手溶接（被覆アークなど）の中間に位置するこの方法は、
スピード・安定性・汎用性のバランスが非常に良い。
MAG・MIG・CO2の違いと特徴
| 名称 | 使用ガス | 主な素材 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| MAG溶接 | 混合ガス or CO₂ | 軟鋼、高張力鋼 | 最も一般的。鉄の溶接に多用される |
| MIG溶接 | アルゴンなど不活性ガス | アルミ、ステンレス | アークが安定しやすく美観も良い |
| CO₂溶接 | 炭酸ガス100% | 一般鋼材 | 安価で深い溶け込みが得られるがスパッタ多め |
「半自動」と言っても、その中にMAG・MIG・CO₂という分類があるって事なんだ。
要するに、MAGはCO₂を含む広い分類で、CO₂溶接はその中のガス種別に着目した呼び名なんだ。
使用されるワイヤの種類と選び方
溶接で使うワイヤには主に2種類あるよ。
ソリッドワイヤ：中が詰まった金属線。ガスと一緒に使用。最も一般的。
フラックス入りワイヤ：中にフラックス（薬剤）が入っていて、ガスなしで使えるタイプも。
太さ（径）は、材料や板厚に合わせて0.9～1.2mmが主流。
設定電流とのバランスがとても重要になる。
使用するシールドガスの種類と役割
アークや溶融池を大気から守るために、シールドガスを使う。
ガス 特徴
CO₂ 安い・深い溶け込み・スパッタ多め
Ar＋CO₂混合 アーク安定・スパッタ減少・コスト高め
Ar（純アルゴン） MIG専用。酸化しやすい素材用。美しい仕上がり
現場ではコストと仕上がりのバランスを考えて混合ガスを選ぶことが多いよ。
半自動溶接機の構造と操作方法
半自動溶接機は以下の構成になってる
溶接本体（電源＋送給装置）
トーチ
ワイヤリール
ガスボンベ
アースクリップ
設定の要点はこの2つ
電流・電圧：溶け込み深さとアークの安定性に直結
ワイヤ送給速度：アークのバランスとビードの形状に影響
半自動溶接のメリットとデメリット
メリット
作業スピードが速い
材料・設備コストが比較的安い
中級者でも比較的キレイに仕上げやすい
ワイヤが自動供給だから連続作業しやすい
姿勢に融通がきく（下向き・立て・斜め）
薄板から中厚板まで対応範囲が広い
量産にも向く
デメリット
スパッタが多くなりがち（特にCO₂使用時）
ワイヤ詰まりやノズル詰まりなどのトラブルが出やすい
小部品や精密作業には不向き
屋外・風の強い環境ではガスが飛びやすい
半自動溶接でよくあるトラブルと対処法
トラブル 原因 対策
スパッタが多い 電圧・送給速度が不適切 数値見直し、ガス確認
アーク不安定 ガス流量不足・ノズル詰まり ノズル清掃・ガス調整
ビード蛇行 手の動きが不安定 トーチ姿勢と視点の安定化
初心者にありがちなミスとアドバイス
トーチを寝かせすぎてアークが飛散
トーチを近づけすぎてブレブレに
電圧・電流を適当に設定してしまう
ワイヤ送給速度が遅くて溶け込み不足
トーチの移動速度が一定でなく、蛇行する
アース不良でアーク不安定
ガスが出てないまま気づかず溶接開始
ノズルの清掃を怠ってスパッタ詰まり
スパッタが手袋やカバーオールに飛んで火傷
🔍 特に「音」を聞くのはコツ。
理想は「ジュジュジュ……」という安定した音。
バチバチ！なら設定が高すぎ、ボソボソ……は低すぎ。
現場での使われ方とあるある
使用シーン
鉄骨建方
製缶作業
車体・トラック荷台の補修
工場ライン溶接
あるある
「ガス切れでパニクる」
「アースどこ？アース！」
「スパッタ掃除に時間かかりすぎ」
「意外と腕よりセッティングが9割」
「ノズルの焼け付き、地味にストレス」
半自動溶接は、ただの“効率のいい溶接”じゃない。
セッティング力と観察力がものをいう、現場の“見えない腕前”が出る溶接なんだ。
初心者でも使えるけど、ベテランの手にかかると“まるで別物”に見える。
その奥深さが、半自動の魅力でもある。
