鉄骨溶接ってどんな仕事?
鉄骨溶接は、ビルや工場、倉庫、橋なんかの骨組みをつなぐための溶接作業。
厚板や大型部材を扱うから、腕と精度がとにかく大事だ。
作業は大きく分けて、部材を作る工場溶接と、現場で組み立てながらやる現場溶接がある。
やる場所が変われば条件も勝手もガラッと変わる。
鉄骨溶接でよく使う溶接法
- 被覆アーク溶接(SMAW)
現場での補修や柱・梁の接合で活躍。 - 半自動溶接(MAG/CO₂)
工場製作の鉄骨ならほぼコレ。 - サブマージアーク溶接(SAW)
長い距離を一気に溶かす大型部材向き。 - TIG溶接(GTAW)
見た目や精度が必要な場所だけに使う。
主役はH形鋼とアングル
H形鋼・山形鋼(L字鋼/アングル)
鉄骨溶接のメイン食材とも言える部材。
山形鋼は断面がL字型で、現場じゃ「アングル」や「L字鋼」と呼ぶことが多い。
工場加工が多く、寸法の正確さと仕上がりの美しさが命。
よくある作業の流れ
- 材料切断:バンドソーやガスで寸法通りに切る
- 穴あけ加工:ボルト接合や仮組みに必要な穴を開ける
- リブ溶接:補強板で部材の強度を上げる
- ブラケット溶接:梁や柱をつなぐ金具を取り付け
- 仮組み→本溶接:位置を合わせて本溶接(下向きが多く効率的)
- 塗装:防錆や仕上げのための塗装作業
品質を守るコツ
- クランプや治具でズレ防止
- 溶接順やパス配分で変形・そりを防ぐ
- 寸法・外観検査はJIS規格に沿って行う
鉄骨コラム(角形鋼管)も重要
鉄骨コラムは柱に使う角形鋼管で、一辺200mm以上の大きめサイズが多い。
見た目がスッキリして強度も高く、最近はH形鋼や丸パイプよりも採用が増えている。
工場ではロボット溶接が多いが、現場での組み立て溶接も避けられない。
現場溶接のポイント
- 横向き溶接の多層盛り、技術勝負の作業
- 厚板は予熱必須
- 一気に溶かさず複数パスで確実に溶け込み
- SAW、FCAW、MAGなど条件に合わせた方法を選ぶ
- ルート間隔や余盛の管理が品質に直結
- 外観、PT、UTなどでしっかり検査
鉄骨溶接ならではの溶接条件
鉄骨溶接は、使う材料や姿勢がある程度パターン化されている分、高電流で行うことが多い。
腕のあるベテランほど高電流設定で溶接していて、たまに新人がそのままの設定でやると「こんな速く動かすの!?」と驚くことも。
JIS試験で鉄骨屋と製缶屋のテストピースを比べると、その差は一目瞭然。
鉄骨屋は高電流でスピード勝負、製缶屋は低電流で繊細に動かす。
ビードの見た目も全然違うけど、どっちも試験では正解なんだ。
この仕事で活きる資格
- JIS溶接技能者評価試験(SA-2F、SW-2Fなど)
鉄骨でもバリバリ使える国家資格。 - AW検定(建築鉄骨溶接技能者評価試験)
鉄骨専用の資格で、工場溶接、現場溶接、鋼管溶接、ロボット溶接オペレーターの4種類。
持っていると設計事務所や建設会社からの信頼度がアップする。
鉄骨溶接工の平均年収は?(統計ベース)
項目 | 数値 |
---|---|
平均月収(所定内給与) | 約32万円 |
年間賞与(ボーナス) | 約64万円 |
推定年収 | 約448万円 |
出典と前提:
・厚生労働省「賃金構造基本統計調査(直近公表年)」の職種「溶接工」を基準に、鉄骨に関わる工程を含む統計で近似(信頼度:B)。
・地域や企業規模、残業・深夜・出張手当の有無で差が出る。数値は全国平均。
・高所作業・現場建方・夜勤・大型案件など、内容によって年収が大きく上振れする事例もあり。
現場での幅(レンジの目安)
工場製作中心(日勤・一般案件):300万円〜400万円
高所作業・夜勤・現場取付(鉄骨建方に関与):400万円〜550万円
長期出張・大型案件:600万円超の事例あり
年収が伸びやすい条件(考え方)
夜勤・交替勤務:係数×1.05〜1.20
高所・玉掛・溶接・酸欠等の各種特別教育・技能講習:手当で上乗せ
長期出張・遠方現場:日当・出張手当で上乗せ
超厚板・大入熱溶接、建方との段取り併任:評価が上がりやすい
※ここで紹介した年収は、統計と実例から推定した参考値です。実際の収入は、会社の業績・地域・勤続年数・資格・担当業務などによって大きく変動します。
まとめ
鉄骨溶接は、建物の安全を支える重要な仕事。
H形鋼やアングルの溶接がメインだが、コラムの現場溶接のように技術が問われる場面も多い。
条件に合った溶接法としっかりした品質管理、そして職人の腕がそろってこそ、鉄骨はまっすぐに立ち上がる。