圧力容器の溶接とは?高圧機器の特徴と現場での注意点

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圧力容器とは?

「圧力容器」って聞くと、ただの大きなタンクを想像する人も多いんじゃないかな。でも実際はまるで別物。中には蒸気やガス、液体が高い圧力で詰め込まれてて、その力は想像以上にすごい。もしそこに欠陥があったら……はい、大事故まっしぐら。だから設計から溶接、検査まで、国の法律でガッチリ管理されてる。

現場で出会う圧力容器は色々ある。化学プラントの反応槽、発電所のボイラー、食品工場のオートクレーブ、LNGや水素を扱う低温タンクまで。どれも「圧力を閉じ込める」ための入れ物だから、溶接工の腕が直結するシビアな世界だよ。

圧力容器の構造と材質

形はだいたい丸い。円筒か球体。理由はシンプルで、角ばった形だと力が一箇所に集中して割れやすいから。圧力を分散させるには「丸」が一番なんだよね。

材質は炭素鋼がよく使われるけど、サビや薬品に強くしたいときはステンレス、さらに特殊なケースでは低合金鋼やクラッド鋼。内側にゴムや樹脂を貼って「ライニング」するやつもあって、酸やアルカリに耐える工夫がされてる。現場で「なんだこれ?」って思ったら、そういう特殊仕様かもしれない。

圧力容器に必要な溶接技術

ここでは「完全溶け込み」が絶対条件。つまり板の厚み全て溶接で繋がってないと駄目。タンクの外見がどんなにキレイでも、中がきちんと溶けてなかったら意味なし。しかも容器はぐるっと一周継ぎ目があるから、立向き・横向き・下向き……全姿勢をこなせないと話にならない。

実際の施工では、まずルートパスをTIGで丁寧に入れて、小物なら最終層までTIGで完成。検査で欠陥が出やすいけど、板厚が厚いものは半自動も使う。工場内の制作で派手な板厚ならサブマージアーク溶接(SAW)を組み合わせるのが王道。どの溶接法をどう組み合わせるか、ここに会社や職人のノウハウが詰まってる。

溶接時の注意点と欠陥例

圧力容器で一番怖いのは、外見はきれいでも内部に欠陥が残っていること。これは本当に命取りになる。見た目のビードがピカピカでも、内部にわずかな未融合やピットがあれば、稼働後に一気に事故につながる危険性があるんだ。

特に注意すべき欠陥はこんな感じ

  • アンダーカット … ビードの端がえぐれて応力集中の原因になる
  • 融合不良 … 溶け込み不足で母材と溶接金属がつながっていない
  • ピット … 小さな穴や気泡。圧力容器では許されない欠陥
  • 割れ … 応力や冷却不良から発生。致命的な欠陥

こうした欠陥を見逃さないために、圧力容器の検査は徹底して行われる。

圧力容器で使われる検査方法

圧力容器の品質確認には大きく分けて非破壊検査(NDT)と破壊検査(DT)の2種類がある。
ボイラー協会の検査員による外観検査もある。

非破壊検査(NDT)

製品を壊さずに内部や表面の欠陥を探る方法。圧力容器では必須で、実際の稼働前検査はこれが中心になる。

  • RT(放射線透過試験):X線やγ線で内部欠陥を撮影
  • UT(超音波探傷試験):音波の反射で割れや未融合を検出
  • PT(浸透探傷試験):表面の微細な割れを液で浮かび上がらせる
  • VT(目視試験):肉眼や内視鏡で表面状態を確認

「中を壊さずに調べる」から、実際の製造品で100%実施されるのがこの非破壊検査。溶接の性質上、欠陥が全く無いのは通常無いので、許容範囲内に収まれば合格になる。とは言え常にハラハラ。

破壊検査(DT)

一方で、製品や試験片を実際に破壊して性能を調べる方法もある。こちらは製造した圧力容器そのものには適用できないので、溶接施工試験や研究目的で使われる。

代表的なのは

  • 引張試験:どのくらいの力で引っ張ると壊れるか
  • 曲げ試験:溶接部を折り曲げて割れや剥離がないか確認
  • 衝撃試験(シャルピー):低温での靭性を調べる
  • 硬さ試験:溶接金属や熱影響部の硬さを測定

圧力容器の場合、溶接施工法(WPS/PQR)の認定時に「試験板」を溶接して破壊検査を行い、そのデータをもって「この条件ならOK」と証明する流れになる。つまり量産前の裏付けとして必須なんだ。

非破壊検査、破壊検査のどれか一つではなく、これらを組み合わせて“徹底的に揺さぶる”のが当たり前。現場でありがちな「まあこれぐらいなら大丈夫だろ」は通用しない、と言うか作業者自身が不安で適当に行わない。
「ちょっと怪しい」が許されないのが圧力容器の世界なんだ。

圧力試験(耐圧・気密試験)

圧力容器は、溶接や非破壊検査をクリアしたあとに、必ず「実際に圧力をかけて安全を確かめる」検査が行われる。これが耐圧試験気密試験

  • 耐圧試験(水圧試験)
     容器に水を満たし、設計圧力より高い圧力をかけて漏れや変形がないか確認する。水を使うのは、万が一破裂してもエネルギーが空気より小さいから。
  • 気密試験(エア・ヘリウム)
     空気やヘリウムを入れて漏れがないかチェックする。ビード表面に塗った石けん水が泡立てば漏れてる合図。ヘリウムは漏れを検知器で反応させる。空気は加圧後の圧力が漏れで下がらないかメーターで確認する。手段は色々だけど1つの方法で確認する事が多い。細かい漏れまで徹底的に調べる。

これらの圧力試験をパスして初めて「圧力容器」として世に出せる。
現場的に言えば、非破壊検査は“体の健康診断”、圧力試験は“実際に走らせて大丈夫かのロードテスト”みたいなもの。どっちも外せない二段構えだ。

圧力容器と法規制

圧力容器は「作って終わり」じゃない。法律にガッツリ縛られてる。日本だと「高圧ガス保安法」や「労働安全衛生法」でルールが決まってて、設計から検査まで全部トレースされる。

たとえば第一種圧力容器なんかは、国の認定を受けた設計・検査が必要。さらに「誰がどこを溶接したか」って記録まで残される。これを「トレーサビリティ」って呼んでるけど、要は逃げ道なしってことだね。

圧力容器に関わる資格

溶接だけじゃなく全行程でみると、この分野に必須なのがボイラー溶接士。普通と特別の2種類があって、厚板や高圧をやるなら特別が必須。
あとはJIS溶接技能者試験の圧力容器向け区分とか、非破壊検査の資格もセットで関わってくる。つまり「資格持ってないと現場に入れない」くらいのガチ度。

現場でのリアル

正直言うと、圧力容器の現場はしんどい。内部に潜り込んでの全周溶接は蒸し風呂みたいだし、ちょっとした開先ズレを直すのに何時間もかかる。頭も体力も持ってかれる仕事だ。

でもね、その分「自分が溶接した容器が実際にプラントで動いてる」っていう誇りは格別。検査に合格したときの安堵感は、ほかの作業じゃ味わえない。これはやった人だけが知ってるご褒美みたいなもん。もはやスリルだからさ。

圧力容器の需要と将来性

昔から化学・エネルギー分野では欠かせない仕事だったけど、最近は水素や再エネの流れでさらに注目されてる。水素タンクやLNGの低温容器なんてまさに最前線。

つまり、圧力容器に強い溶接工はこれからも食いっぱぐれない。むしろ「この道を極めれば一生安泰」と言っていい分野だ。

圧力容器の溶接工の平均年収は?(統計ベース)

年収情報は、厚生労働省の公式統計だけではなく、複数の求人情報サイトや現場データを参考に推測したものです。あくまで目安としてご覧ください。実際の収入は、会社の業績・地域・勤続年数・資格・担当業務などによって大きく変動します。

項目 数値
平均月収(所定内給与) 29.8万円
年間賞与(ボーナス) 68.0万円
推定年収 425万円

出典と前提:
・厚生労働省「賃金構造基本統計調査(直近公表年)」の職種「溶接工」「ボイラー溶接工」を基準に、圧力容器分野に関わる工程を含む統計で近似。(信頼度:B
・地域や企業規模、残業・深夜・出張手当の有無で差が出る。数値は全国平均

現場での幅(レンジの目安)

圧力容器の溶接は板厚・材質・工程の難度で収入に幅が出る。求人や実例ベースで見ると、だいたい以下のレンジになる。

  • 経験3~5年・普通鋼中心:360万円~420万円
  • 厚板・ステンレス・低温用容器など高難度材:420万円~600万円
  • プラント据付や大型ボイラー、長期出張案件:700万円超のケースあり

年収が伸びやすい条件(考え方)

  • 夜勤・交替勤務:係数で上乗せ(×1.05〜1.20)
  • 長期出張・現地据付:出張手当・日当が加算
  • 高難度材(厚板・二相ステン・ハステロイ・チタン):単価アップ
  • 資格手当(ボイラー溶接士・JIS・WES・非破壊検査など):固定加算
  • 図面の記載不備の指摘、段取りの提案~検査対応まで一気通貫できる職人:評価が高くなりやすい

相原から最後に

圧力容器は溶接の中でも厳しい検査がついて回る仕事。開先精度の写真、裏ビード及び裏はつりの写真、溶接脚長の検査、内部検査、外観検査など、当たり前な事なんだけど正しく行わないと駄目なんだ。当然高度な技術も必要。規制は厳しいけど、その分だけ信頼と誇りが手に入るし、自信もつく。大げさに言えば「人の命を守る溶接」だし、やりがいもトップクラスだからね。

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