造船と溶接の関係
造船業って、簡単に言えば「でっかい鉄の塊を人の手で組み上げる」仕事だ。
タンカー、フェリー、貨物船──全部が鉄板の集合体で、その鉄板をつなぐのが俺たち溶接工。
昔はリベットで鉄板をバチバチ留めてたけど、今は溶接が主役。だから「船の大半は溶接でできてる」と言っても言い過ぎじゃない。
初めて現場に行った人は「わー!でかすぎて意味わからん!」ってなると思う。鉄板一枚が数トンあって、それをアークで炊きながら一隻の船に仕上げる。規模感がバグってる世界だね。
大きいから精度なんて適当でしょ? なーんて言われそうだけど、そんな事はない。逆に1つ1つを厳しい目で作っていかないと組み合わせない。つまり高度な作業のでっかい塊、それが造船溶接ってジャンルなんだ。
造船の現場作業の流れ
造船はまず鉄板の切断から。で、それを曲げたり加工して「ブロック」と呼ばれる塊にする。
このブロック、ちっちゃい家ぐらいのサイズがあって、それを工場で組み上げ、最後にクレーンで吊って「合体!」。
これを繰り返していくと、少しずつ船の形になっていくんだ。
でかいパズルをみんなで組んでる感じだけど、パズルと違って「サーセン、間違えました」で済むわけが無いのが恐ろしいところ。
造船現場の一日(体験描写)
朝は安全確認から始まる。で、班に分かれて持ち場へ。
厚板溶接、高所作業、配管の中に潜っての溶接……やることは色々。
夏?もう地獄。鉄板がフライパン状態で、ヘルメットの中はサウナ。
冬?アイスバーン。鉄に触るだけで手がかじかむ。
海沿いだから風も強いし、季節がマジで容赦ない。
しかも立て向きで厚板を焚いてると、火の粉が雨みたいに降ってくる。服の中に入ったら「熱っっっ!」って飛び上がる。
「勝手に登ってく自動溶接機に任せてくれよ…」と言いたいのをグッとこらえ、己をウィービングマシンだと思い込んで今日も励む。
でも、休憩で仲間に「お前のビード、いい感じだったな。あれ引き?押し?」なんて言われると、妙に誇らしい気持ちになって救われる。
「あー、今日も暑かったなー」なんて当たり前の言葉も、共感で心が和む。
でもやっぱり嬉しいのは、褒められること。現場ってそういうもん。
造船で使われる溶接方法と現実的な使い分け
造船で使う溶接方法はいくつかあって、これがまた現場ごとにクセがある。
- 被覆アーク溶接:狭いとこや仕上げでよく使う。
- 半自動(MAG/CO₂):ブロック溶接の主力。ガンガン進む。
- サブマージアーク:厚板の長い直線を自動でやる。派手さはゼロだけど効率最強。
- TIG溶接:配管とか精度が必要な部分で登場。
教科書的には「用途で分ける」とか書いてあるけど、実際は「ここは半自動で突っ走ろう」「ここは被覆で仕上げよう」って職人の勘と経験で決まる。要は臨機応変。
造船溶接の難しさと工夫
造船の溶接で一番の敵は「歪み」。
厚板を高電流でドカンと焼くと、冷える時に「ギュッ」と縮んで勝手に動くんだよ。「おいおい、言うこと聞け!」って感じ。
ベテランは溶接の順番、タックの入れ方、冷やし方まで計算して歪みを抑える。
若手がベテラン設定の高電流を真似すると、「え、こんな速く進むの?」ってビビると思う。鉄骨とか製缶の試験ピースと比べても、造船のやつは設定が全然違うんだ。
品質検査のリアル
溶接が終わったら検査タイム。ここからが本番って言ってもいい。
UT(超音波)、RT(X線)、VT(目視)。この検査でNG出たらグラインダーで削ってやり直し。
検査員に「ここダメ」って言われる瞬間、マジで心臓に悪い。
同じとこをまた焼き直すのは時間も体力も削られるけど、「不具合ゼロ」で一発合格した時のスッキリ感はヤバい。あれは現場のご褒美。
造船で必要とされる溶接資格は?
造船の現場で働くなら、まず必要になるのは JIS溶接技能者評価試験(JIS Z 3841)。
日本国内で最も一般的な溶接資格で、いわば「造船所への入場パス」だね。
被覆アーク、半自動、TIGなど、材料や板厚、溶接姿勢によって区分が分かれていて、造船では 厚板×全姿勢 の資格が特に重宝される。
船級協会の溶接認定資格
ただし造船は国内規格だけじゃ済まないことも多い。
輸出船や大型船など、国際的な船級協会の検査が入る船を溶接する場合には、船級協会の認定資格が必要になる。
代表的なのは:
- 日本海事協会(Class NK) 溶接士技能検定
- アメリカ船級協会(ABS) 溶接士技能検定
- ロイド船級協会(LR) 溶接士技能検定
これらは国際的な安全基準に基づいて実施されるもので、材料・板厚・姿勢ごとに細かく試験が分かれる。
JISより条件が厳しいケースもあり、船体主要部を溶接する場合は必須になることが多いんだ。
ボイラー溶接士との関係
船級協会の資格は評価も高く、なんと ボイラー溶接士の実技試験免除対象になっている。
具体的には:
- 日本海事協会(Class NK)の「溶接士技量確認試験」
→ 合格していれば、ボイラー溶接士の実技試験が免除される。
理由は、船級協会の試験がボイラー溶接士の実技と同等かそれ以上の水準だから。
ただし免除されるのはあくまで「実技」のみで、学科試験は必ず受験しなきゃいけない。
まとめると
- 日本人溶接工:基本は JIS資格 が必要。
- 国際案件や輸出船:船級協会の溶接認定資格 が求められる。
- 船級協会の資格は ボイラー溶接士実技免除 にも使えるほど信頼度が高い。
つまり造船の現場では、JIS=国内通行証、船級協会資格=国際切符 みたいなイメージだね。
造船溶接工の年収相場は?(推定値)
造船所で働く溶接工の収入は、会社の規模や地域、夜勤や出張の有無でかなり変わる。
ここでは統計と現場の実情をもとに、おおよその相場感を紹介するよ。
年収情報は、厚生労働省の公式統計だけではなく、複数の求人情報サイトや現場データを参考に推測したものです。あくまで目安としてご覧ください。実際の収入は、会社の業績・地域・勤続年数・資格・担当業務・残業時間などによって大きく変動します。
項目 | 数値 |
---|---|
平均月収(所定内給与) | 約30万円〜35万円 |
年間賞与(ボーナス) | 約60万円〜70万円 |
推定年収 | 約420万円〜490万円 |
出典と前提:
・厚生労働省「賃金構造基本統計調査(直近公表年)」の職種「金属溶接・溶断従事者」を基準に、造船に関わる工程を含む統計で近似(信頼度:B)。
・地域や企業規模、残業・深夜・出張手当の有無で差が出る。数値は全国平均。
・求人サイトや業界資料をもとに、造船業特有の働き方(厚板溶接・ブロック建造・長期出張など)を反映して補足。
現場での年収レンジ(実勢目安)
- 経験5年以上(ライン工や一般案件):450万〜600万円
- 厚板・特殊姿勢溶接(狭所・高所対応あり):550万〜750万円
- 出張工事・期間工:600万〜800万円(手当込み)
年収が伸びやすい条件
- 厚板溶接の実績 → 造船特有の高電流・厚板経験があると単価アップ。
- 資格の保有 → JIS溶接技能者評価試験(SA-2V、N-3Hなど)があると手当つきやすい。
- 夜勤・長期出張に対応できる → 出張対応できる人は収入が跳ね上がる。
やりがいと将来性
造船の溶接って、正直しんどい。でもやりがいは抜群。
自分の手でつないだ鉄板が、最終的に数千トンの船になって海に浮かぶんだから。これは他の仕事じゃ味わえない達成感だ。
業界全体は若手不足が深刻。でも裏を返せば、今はチャンスだらけ。腕があれば必ず仕事はあるし、日本の造船技術はまだまだ世界レベル。
相原から最後に
造船の溶接工は「過酷だけど超やりがいのある仕事」。
夏は灼熱、冬は極寒、検査は心臓に悪い。でもその先に「自分の溶接が船を走らせる」って誇りがある。
震えるくらいの技術の集合体だよ造船て。その場所にいるだけで、仕事のやりがいなんて全部満たされそうだよね。
もし「腕を試したい」「でっかい仕事がしたい」と思うなら、造船の現場は間違いなく挑戦しがいがある場所だと僕は思う。だって、あのスケールの物だよ。パねえってヤツだよ。
ホント誇れるよね。