タングステン電極の種類と特徴 完全ガイド|レアアース系・定番5種の違いを現場目線で解説

TIG溶接って、ビードの見た目も仕上がりもほんと繊細なんだよね。
その“繊細さ”を支えてるのが、そう、タングステン電極。
いわばアークの芯。これが決まらないと、どんな名人でも良い溶接にはならないんだ。

タングステン電極にはいろんな種類があって、見た目も性能もバラバラ。
「どれを使えばいいんだろう?」って迷う人も多いと思う。
でも安心して。この記事を読めば、自分の溶接スタイルに合ったタングステンがきっと見つかるはず。
最後に僕の好みも書いておくよ!

タングステン電極って何?

タングステン電極は、TIG溶接やプラズマ溶接で使う「溶けない電極」のこと。
タングステン(元素記号W)は融点が約3,422℃もある超・耐熱素材で、
アークの熱にも負けず、安定した放電をキープしてくれるんだ。

つまり、タングステンがぶれない=ビードがキレイになる。
TIG溶接の命はアークの安定性だから、電極の種類選びで仕上がりが大きく変わってくる。

色でわかる!タングステン電極の種類とクセ

タングステン電極の先っぽに色がついてるの、見たことあるよね。
あれはただの目印じゃなくて、中に混ざっている酸化物(添加物)を示す色コードなんだ。
添加物の種類によって、アークの立ち上がりや安定性、寿命までも変わる。

定番タングステン電極5種類

種類主な添加物得意分野特徴
WP(純タングステン)なしAC溶接(アルミ)アーク中に先端が自然にボール状になって安定。アルミ溶接の昔ながらの定番。
WT20(トリウム入り)ThO₂ 約2%DC溶接(鉄・ステン)アークが安定して長寿命。ただし放射性あり。現在は使用を避ける傾向。
WL15/WL20(ランタン入り)金/青La₂O₃ 約1.5〜2%AC/DC両方OK安全で万能。アーク始動が軽く、今の主流タイプ。迷ったらこれ。
WC20(セリウム入り)CeO₂ 約2%DC溶接(薄板・低電流)低電流でも立ち上がりがスムーズ。非放射性で薄板や精密作業に向く。
WZ8(ジルコニア入り)白(または茶)ZrO₂ 約0.8%AC溶接(アルミ)高電流でも先端が崩れにくく、安定したアークを維持。アルミ向き。

派生・特殊タングステン電極

最近は、性能をさらに高めた“派生タイプ”も増えてきてる。
特殊材料や精密用途で使われることが多いけど、特徴を知っておくと電極選びの幅が広がる。

種類主な添加物得意分野特徴
WY20(イットリウム入り)Y₂O₃ 約2%DC溶接(精密部品・薄物)アークが細く集中しやすく、寿命も長い。非放射性。
WL10/WL25(ランタン1%/2.5%)黒に近い金/空色La₂O₃AC/DC両用WL20の派生で、電流域に応じた使い分けができる。
WS2(シリカ入り)SiO₂ 約1~2%DC溶接(ステンレス)アークの集中性が高く、海外製で高性能。ただしやや脆い傾向。
WRe15/WRe26(レニウム入り)オレンジ/濃灰Re 約1.5~2.6%高温・特殊合金溶接高温でも電極が変形しにくい。航空・真空装置など特殊用途で使用。
E3(複合レアアース)La + Ce + YAC/DC両用レアアースを複合した新世代タイプ。非放射性で長寿命・アーク安定性が高い。

「レアアース系」ってなに?

最近よく聞く「レアアース系タングステン」っていうのは、
ランタン・セリウム・イットリウム・ジルコニウムなどの酸化物を含むタイプ全体のことなんだ。

昔はWT20(赤)が主流だったけど、酸化トリウムが放射性物質だから今はほとんど使われていない。
その代わりに登場したのが、このレアアース系
非放射性で安全、しかも性能はWT20に負けない。
アークの立ち上がりが軽く、安定していて、寿命も長い。
今では世界的に完全に主流になっている。

特にE3は、ランタン・セリウム・イットリウムの良いところを組み合わせた“ハイブリッド型”。
アークの安定感と寿命のバランスがすごく良くて、オールラウンダーとして人気なんだ。

現場での選び方のコツ

タングステン選びは、溶接スタイルの一部なんだよね。
どの電極を使うかで、アークの立ち方や溶け方がまったく変わる。
素材や電流に合わせて選ぶのがポイント。

溶接対象おすすめ種類ポイント
アルミ(AC溶接)WZ8(白)/WL20(青)高電流でも安定。酸化膜に強く、ボール先端がキレイに整う。
鉄・ステンレス(DC溶接)WL20(青)/WC20(灰)アーク集中性が高く、立ち上がりがスムーズ。
精密溶接・薄板WC20(灰)/WY20(黒)低電流でも安定してアークが出せる。
オールマイティに使いたいWL20(青)/E3(紫)安全で万能。トリウムフリーで扱いやすい。

タングステン電極の研ぎ方と角度

タングステンの先端角度は、アークの集中度・溶け込み・ビード幅まで左右する大事なポイント。
溶接電流に合わせて角度を変えるのが基本だよ。

溶接電流研ぎ角度(先端角)特徴
低電流(〜70A)約30〜40°アークが広がりやすく、薄板向き。熱の入りがやさしい。
中電流(70〜150A)約45〜60°標準的な角度。鉄・ステンレスにちょうどいい。
高電流(150A〜)約60〜90°アークが集中して深い溶け込み。厚板や開先向き。

研ぐときは必ず**軸方向(縦研ぎ)**が基本。
横研ぎにするとアークが散って安定しなくなるから注意してね。
研ぎ跡の筋がアークをガイドするように、まっすぐ整えるのが理想なんだ。

職人のこだわりは、タングステンの先に出る

料理人が素材や気温に合わせて包丁を研ぐように、
溶接工もタングステンの状態に自分の仕事を託しているんだ。

同じTIG溶接でも、使う電極が違えばアークの立ち方も変わる。
たとえば、国産(東芝・パナソニックなど)のタングステンを丁寧に研いだときのアークは、
一点に吸い付くように安定して、ビードも滑らかに走る。この使用感は種類とはまた別の感覚。
一方、安価な海外製を適当に研いだものだと、アークが暴れて熱が散りやすい。
酷いのだと買った時点で割れてる。でもすごく安い。

この差は値段よりも、電極の密度・結晶の均一さ・焼結の精度、
そして研ぎの角度――それら全部の積み重ねで決まってくる。

タングステンを見れば、その人の性格や仕事の丁寧さがわかる。
小さな電極の先に、職人のこだわりと呼吸が宿ってるんだ。

相原から最後に

TIG溶接の仕上がりは、タングステンの選び方ひとつで本当に変わる。
今の主流はトリウムフリーのレアアース系(ランタン・セリウム・E3など)
安全で長持ち、そしてアークも美しい。

「なんとなく選ぶ」から「使い分ける」へ。
自分の溶接スタイルに合った一本を見つければ、
TIG溶接の世界がもう一段上に見えてくるはずだよ。

と、ここまで書いて最後に僕の好みを言っちゃうと、安い“ランタンの金”
普通に使うには値段と性能のバランスが1番良いように感じるから。東芝、パナはここ1番の繊細な溶接で使ったりするけどやっぱ高いなぁ、アークの安定感は最高だけどね。これもまた使い分け。

タングステンは好みもあるから僕の好みは参考程度で!

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