もう生産は止めない!金型修理でラインを守る技術と収入の話

金型修理とは?なぜ必要?

工場の生産ラインって、金型が止まったら即アウト。
でも金型は鉄の塊でも消耗品なんだよね。摩耗したり、欠けたり、割れたりは避けられない。

新品を作る?いやいや、数百万〜数千万かかるし納期も数か月。
だから現場は「とにかく修理で延命しよう!」ってなる。

修理を外注する流れ

外注するときの大まかな流れはこんな感じ👇

  1. まず壊れたところを確認(写真や図面があると話が早い)
  2. 修理業者に相談して見積もり
  3. 提案された修理方法を検討(TIG溶接の肉盛り、レーザー、部品交換など)
  4. 修理完了 → 仕上げ加工 → 納品・試作確認

ポイントは「どう壊れたのか」をしっかり伝えること。情報が少ないと、見積もりもブレやすい。

修理方法と費用感

  • TIGやレーザーで肉盛り修理
     摩耗や欠けを直すのに使われる。費用は数万円〜数十万円。
  • 部品交換や研磨再加工
     摩耗が大きいとこちら。数十万〜数百万円になることも。
  • レーザー溶接修理
     高額だけど、寸法精度を崩さず直せる。精密金型では強い選択肢。

要は「金型の大きさ・材質・精度要求」で値段が跳ねるってこと。

修理業者の選び方

修理を外注するならここはチェック👇

  • レーザー溶接に対応できるか
  • 過去の実績や事例を公開しているか
  • 納期や緊急対応の柔軟さ
  • 値段だけで決めずに、品質や保証も考える

「安いけどすぐ再不具合」ってケースはよくある。結局は高くつくから注意。

工具鋼と金型の関係

金型って普通の鉄板や構造用鋼じゃなくて、工具鋼っていう特別な材質で作られてる。
硬くて摩耗に強いけど、そのぶん溶接すると割れやすいクセ者。
だから「金型修理は難しい」って言われるんだ。

区分 代表記号 特徴 金型での用途
炭素工具鋼 SK材 炭素量が高く、熱処理で硬度を出しやすい。価格が安く入手しやすいが、靱性は低め。 単純な刃物や簡易金型
合金工具鋼 SKS 炭素工具鋼にクロムやタングステンを加え、耐摩耗性・靱性を改善。幅広く使えるバランス型。 せん断金型、打抜き金型
ダイス鋼 SKD 冷間用(SKD11など)と熱間用(SKD61など)があり、高硬度・高耐摩耗性を持ち、金型に最も多く使われる。 プレス金型・鍛造金型・射出成形金型
高速度工具鋼(ハイス) SKH 焼入れ後も高温硬さを保ち、切削工具に最適。耐摩耗性・耐熱性に優れるが高価。 切削工具(金型では補助的)

📌 金型で一番よく使われるのは SKD(ダイス鋼)
冷間用のSKD11、熱間用のSKD61が主役で、金型修理の溶接はこの材質との戦いになる。

金型修理の裏側(現場目線)

金型修理って、見た目以上にシビア。
材質は焼き入れ鋼とか超硬だから、溶接の熱入れすぎで クラック(ひび) が入るなんてザラ。

しかも寸法精度はミリどころか「1mmビード高くてもアウト」って世界。
溶接したあと研磨や再加工でビシッと寸法戻さなきゃいけない。

要は「根気×精度×技術」の勝負。職人泣かせだけど、やりがいはある。

具体的な修理事例

ケース1:パンチ部が欠けた金型

自動車部品のプレス金型で、パンチ部がごっそり欠けた例。
新品に交換すると数百万円だけど、レーザー溶接で肉盛り→研磨→再組立で仕上げ。
修理費用は40万円ほど、納期は10日。ライン停止を最小限で済ませられた。

ケース2:摩耗が進んだキャビティ

樹脂金型でキャビティ部が摩耗し、製品に寸法不良が出ていた例。
摩耗部をTIGで肉盛り溶接し、研磨で寸法を戻す作業。
新品交換なら半年近くかかるところを、修理で2週間。
費用は70万円程度だったが、ラインを止めずに済んで大幅なコスト削減に。

ケース3:割れが入ったインサート

インサート部品に熱疲労で割れが入った例。
レーザー溶接で細かく補修し、最小限の加工で再生。
部品交換だと100万円超だったが、修理は15万円+3日で完了。

金型修理に使う溶接方法と溶接棒

TIG溶接

  • 古くから金型補修で使われる。
  • 低電流でコントロールしながら肉盛りできる。
  • 欠けや摩耗が大きい部分に向くが、熱影響で割れリスクあり。

レーザー溶接

  • 熱影響が小さく、SKD材の修理に強い。
  • 精密補修の主役。角や細部の修理に適している。
  • デメリットは設備が高額で、対応できる職人も限られること。

溶接棒・ワイヤの種類

  • SKD11用:高炭素・高クロム系。耐摩耗性を重視。
  • SKD61用:耐熱性重視。熱疲労や割れを防ぐ合金成分。
  • 汎用補修棒:どんな工具鋼でも肉盛りできるが、性能は専用材に劣る。
  • レーザー用ワイヤ:0.2〜0.6mm径の専用材。母材と同等成分を選ぶことが多い。

金型修理に関わる溶接工の年収相場は?(推定値)

年収情報は、厚生労働省の公式統計だけではなく、複数の求人情報サイトや現場データを参考に推測したものです。あくまで目安としてご覧ください。実際の収入は、会社の業績・地域・勤続年数・資格・担当業務などによって大きく変動します。

項目 数値
平均月収(所定内給与) 約28万円〜33万円
年間賞与(ボーナス) 約50万円〜70万円
推定年収 約390万円〜470万円

出典と前提:
・厚生労働省「賃金構造基本統計調査(直近公表年)」の職種「金属溶接・溶断従事者」や「金型製造工」を基準に、金型修理に関わる工程を含む統計で近似(信頼度:B)
・地域や企業規模、残業・夜勤・手当の有無で差が出る。数値は全国平均
・求人サイトや業界資料をもとに、職種別の傾向を補足。

現場での年収レンジ

  • 経験3〜5年(一般修理案件):400〜550万円
  • 精密溶接(レーザー・高硬度材対応):500〜700万円
  • 独立・専門修理業:600〜1000万円の報酬例あり

年収が伸びやすい条件

  • JIS溶接技能者(TIG) → 精密溶接の証明として有利
  • レーザー溶接の実務経験 → 希少スキルで高単価案件に直結
  • 研磨や調整まで対応できる経験 → 一人完結できる職人は高評価

相原から最後に

外注する人からすると、新品より「早く・安く」生産ラインを守れるのが修理の強み。
現場工にとっては、精度と経験が評価される分野で、スキルが収入に直結する。

要は、信頼できる業者や職人に任せることが最終的なコスト削減になるってことだね。
そして、他の溶接業種と比べても金型修理は圧倒的に件数の少ないニッチな分野。
それでも確実に「必要とされ続ける仕事」なのは間違いないんだ。

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