「CMT溶接とは? スパッタゼロで薄板も異種金属もこなす最先端技術」

CMTって何?

「CMTって聞いたことあるけど、結局何なの?」、「CMT?聞いたこと無いし」
そんな人のために、まずは簡単に説明するよ。

CMT(コールドメタルトランスファー)は、ドイツのフロ二ウス社が開発した溶接技術。
簡単に言えば、ミグ溶接(MIG/MAG)をベースにした高精度な低入熱溶接技術。めちゃくちゃスパッタが少ない新しい半自動溶接だ。

でも、「ただの高性能半自動」と思ったら大間違い。
ワイヤの送り方そのものが違うんだよね。

CMTの仕組み(ハンマリング効果)

CMTは、普通の半自動と違って
ワイヤが母材に触れた瞬間に「電流をOFF」にして、「ワイヤを一瞬引き戻す」。
この動きが、いわゆる「ハンマリング効果」

イメージとしては、「ポトッ、ポトッ」と金属の粒を落とす感じ。
普通の溶接だと、ワイヤがアークで溶けて「バチバチ!」と飛ぶけど、
CMTだと、飛ばさずにそっと置くような動きになる。

この動きによって、スパッタがほぼゼロになる。

CMTでできること・得意なこと

CMTは「低スパッタ・低入熱・薄板溶接」が大得意。
0.3mmのアルミ板でも、焼き抜けせずに溶接できる。

しかも、CMTは異種金属の溶接も可能。
たとえば、こんな材料に対応できる。

金属 CMTでの対応 備考
アルミ CMTの本領発揮。0.3mmでもOK。
チタン △(一部可) TIGが主流だが、CMTも実例あり。
難しいがスパッタ少なく溶接可能。
真鍮 気化に注意。CMTなら制御しやすい。
マグネシウム 燃えやすいがCMTなら可能。
インコネル ニッケル系合金も実績あり。
異種金属(アルミ+鉄など) 特殊ワイヤ+CMT制御で可能。

現場目線で見たCMT

実は昔、フロ二ウス製品を扱う商社が目の前でCMTのデモをしてくれたことがあるんだけど、その時に思ったのが、「トーチがショットガンみたいにデカい!」ってこと。
申し訳ないけど実際の溶接を見る前までは、

「こんなゴツいトーチで細かい作業は無理なんじゃないの?これ使う場面ある?」

と思ったのをよく覚えてる。

でも、実際に薄板アルミの溶接を見たときはホント驚いたし、変な悔しさすら覚えた。スパッタはゼロ、ビードも超キレイ。
「なるほど、手作業よりもこれは自動車のラインやロボット溶接には向いてるなー」と思ったんだ。

CMTの弱点も知っておこう

どんな技術にも弱点はある。CMTも例外じゃない。

項目 CMT 一般的なCO2/MAG
熱入力 小さい 大きい
スパッタ ほぼ無し 多い
薄板対応 超得意 苦手
厚板対応 苦手 得意
トーチサイズ デカい 小回りきく

つまり、CMTは万能じゃない。

「薄板・量産・ロボット用には最高」

「狭い場所・厚板・手作業には不向き」

現場で使うなら、「どんな仕事にもCMTでいける!」と思わない方がいいかも。
でも機械は進化する。そのうち気がつけばデメリットを解消したモデルも出てるかもね。

CMTは「未来の半自動」

CMTは、「これからの溶接現場」を考えた技術。
とくにアルミや異種金属、薄板の自動化ラインでは主役クラスの存在だ。

ただし、
「CMT=最強」って考えると、ちょっとズレる。

適材適所。
これがCMTの付き合い方だと、個人的には思ってる。