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刑務所で溶接を覚えた人と働いてみた。現場20年以上の僕が語る“リアル”

溶接の現場って、外から見るとちょっと“いかつい世界”に見えるらしい。
火花バチバチ飛んでるし、でっかい鉄がゴンゴン動くし、声もデカい。

でも実際に入ってみるとね、
人間味にあふれた、すごく懐の深い世界なんだよ。

今回のテーマは、その懐の深さを象徴するような話。
ちょっと特殊だけど、実は現場ではめちゃくちゃ“日常”だったりする。

「刑務所で溶接を覚えてきた人」って、実際どうなの?
そんな興味本位で来た人に向けた、僕自身の“実話ベース”のコラムだ。

最初に言っておくけど、僕は20年以上この業界で働いてきた。
その中で、

刑務所で溶接を覚えて出てきた人たちと、一緒に働く機会は普通にある。

だから今から書くのは、噂話や偏見じゃない。
現場で見てきた“リアル”だけ。

べつに今から犯罪しようと思って事前調査してるわけじゃないよね(笑)
ただ「へぇ〜そんな世界があるんだ」くらいの温度感で読んでもらえたら十分。

“特別枠”でも“タブー”でもない。
ほんとに日常の一部。

そんな現場のリアルを、尊重と現実の両方をちゃんと乗せて話していくよ。

刑務所でなぜ溶接を教えるのか?

まずはここから。

国が「溶接」という技術を受刑者に教えるのには、ちゃんと理由がある。

  • 再就職しやすい
  • 学歴より技術で評価される
  • 地域差が小さい(どこでも工場はある)
  • 努力したぶんが“手”に出る
  • 自立しやすい

つまり、

“本人の頑張り次第で人生を立て直せる仕事だから”

ということ。

施設によって違いはあるけど、基本的に学べるのはこんな内容だ。

  • 被覆アーク溶接
  • 半自動溶接
  • ガス溶接
  • 安全衛生(アーク光・感電・ヒュームなど)
  • 姿勢(F/H/V/OH)

TIGの配管まではいかなくても、
基礎はビックリするほどしっかりしてる。

職業として溶接をやってきた僕から見ても、
「丁寧に教えてるんだな〜」って感じるビードが多い。

刑務所の訓練ってどんな雰囲気なの?

一言で言うと──
“めちゃくちゃ静かな職業訓練校” だ。

現場の訓練だと、

  • 「材料ないからこれ手伝って!」
  • 「急ぎの工程入ったから訓練中止」
  • 「今日は別作業優先で!」

みたいな割り込みが日常的にある。

でも刑務所の場合、
訓練は訓練としてしっかり確保される。

奇妙な話だけど、
集中して基礎を積むには実は良い環境 でもあるんだ。

もちろん制約も多い。
最新設備があるわけじゃないし、自由度も低い。

それでも、

“基礎を積みたい人にとっては、集中できる場所”

これは事実。

就職活動は「刑務所の中」で完結!出所者を支える国の仕組み

「溶接の技術は身につくけど、結局どうやって仕事を見つけるの?」
ここ、めちゃくちゃ大事なポイントだよね。

結論から言うと、
今の就労支援はかなり手厚い。
出所前に“出口の準備”がほぼ完結する仕組みになっている。

ハローワークと刑務所の連携がすごい

昔は出所後に自分でハローワークへ行く流れだったけど、
今はもうその時代じゃない。

今は、

ハローワークの職員が刑務所へ“出張”してくる。

その結果、出所前にこんなサポートが受けられる。

施設内で職業相談

ハロワ職員が個別に面談して、
これまでの職歴・資格(溶接など)を元に相談に乗ってくれる。

「受刑者等専用求人」が実在する

出所者の採用に積極的な企業が出す、
特別枠の求人 がハローワークに存在し、刑務所へ提供される。

面接も施設内で完結することがある

企業の採用担当が刑務所へ訪れて面接することも普通にある。

つまり、

出所後の住む場所と働く場所を、刑務所にいる間に確保できる。

再スタートの土台が整えられている。

企業側への後押しもある

企業が「優しいから採用する」わけじゃない。
国の制度が後押ししてる。

  • 出所者の雇用に対する助成金
  • 試行雇用に対する奨励金

これがあるから、
鉄骨・製缶・配管・プラント・造船など
もともと人手不足の業界は特に採用しやすい。

技術を身につける場所(刑務所)と、
それを活かす出口(ハローワーク)が繋がっている。

ここがめちゃくちゃ大きい。

現場ではどれくらい“日常”なの?

ここ、一番誤解されやすい部分だから丁寧に言うね。

現場では、刑務所上がりの人と働くことは本当に普通。
珍しくも、特別扱いすべきものでもない。

ただし大事なのはここ。

  • 「ムショ上がりだから優遇される」 → ない
  • 「ムショ上がりだから見下される」 → ほぼない

溶接の世界は単純で、
“今この瞬間どれだけやれるか”
だけを見てくる。

じゃあ具体的にどんな感じなのか
僕の実話を2つ紹介する。

実話①:丁寧すぎる職人さんの告白

僕が若い頃、現場でめちゃくちゃ丁寧な仕事する職人さんがいたんだ。 まず第一に溶接がキレイ。機嫌も良いし、怒鳴らないし、優しい。半年くらい一緒に働いた頃、休憩中にふとこう言われたんだ。

「俺さ、ムショ上がりなんだよねー」

キャラとのギャップからして一瞬驚いた。 でも同時に、頭の中でこう思った。 「仕事する上でそれはどうでもいいか。だって仕事めちゃキレイだし、尊敬できる所多いし。」

これ、本当にそのままの感覚。“過去”より“今の姿勢”のほうが圧倒的に強いんだよ。

実話②:綺麗なビードを引く若手の修行先

鉄骨の現場で愛嬌良い若手がやたらビード綺麗だったから聞いたんだよ。 「どこで練習したの?」って。

「牢屋の中っス!」

牢屋って言い方のクセと、サラッと言うんかい!ってノリが直球で思わず笑ったけど、マジで丁寧な盛りで気になったんだ。 刑務所で鉄骨を溶接してたわけじゃないのはわかるけど、変なクセがない。基礎がちゃんと入ってる証拠。
これは僕の勝手な思いだけど、刑務所の中では技術を身に着けたいって強く思う人達が多いのかもしれないね。

2つだけ紹介だけど僕の体験全て話したら10件は軽く超える。そのくらい日常にある事だよ。

「犯罪を犯した事実」は消えないけれど

ここは避けずに触れる。

もちろん、被害に遭われた方のことを思えば、
簡単に許されるような話じゃない。

罪が“一生消える”なんてこともない。

でも、

「法的な罰」は受け終わっている。
そこから先の人生を生き直す段階にいる。

現場では、そこに対して
「ムショ上がりだからどう」
って色眼鏡を持つことはほとんどない。

これは“優しい世界だから”というより、
技術職の価値観がそもそも違うから。

今どれだけ真面目に火花の前に立っているか。
それだけ。

ただそれだけなんだ。

本当に仕事できるの? → できます

しかも“普通に戦力”になる。

溶接は努力した分そのまま手に出る世界。

刑務所で基礎を真面目に練習してきた人は、
本当に伸びが早い。

  • 鉄骨
  • 製缶
  • 配管
  • プラント
  • 造船

このへんは特に入口が広く、
技術さえあればちゃんと食っていける。

溶接って、やり直しの効きやすい仕事なんだ

溶接は“手の仕事”。
経歴や肩書きより、手がすべて語る。

  • 正直に努力した人は素直に上達する
  • 自分のペースで積める
  • 嘘がつけない
  • ごまかしが効かない
  • 続けた人が結局いちばん強い

だから、
再スタートに向いている仕事
でもある。

ムショ上がりだからどう、ではなく、
今どう働いているか
それで判断される世界。

このコラムで一番伝えたいこと

それはね、

過去を背負った人たちに、堂々と輝いてほしい。

という気持ち。

特別扱いもしないし、絶賛もしない。
被害者のことを忘れるわけでもない。

でも、

罰を受けて、また働こうとしてる人を肯定する。

これは仲間として自然だと思う。

この世界は“過去”じゃなく“今”を見る。
それは綺麗事じゃない。
本当にそう。

現場で“再スタート組”と一緒に働くたびに思う。

溶接って、人を救える仕事だな。

相原から最後に

  • 刑務所の溶接訓練は基礎がしっかりしてる
  • 出所前に“就職活動が完結”する仕組みがある
  • ハローワークが刑務所へ出張してくる
  • 受刑者専用求人も存在する
  • 面接も施設内で実施できる
  • 技術+出口のセットで再スタートしやすい
  • 現場には普通に“ムショ上がりの仲間”がいる
  • 特別扱いでも差別でもなく、ただの日常
  • 技術は努力したぶんだけ手に出る
  • 溶接はやり直しが効く仕事

暗い話じゃない。湿っぽい話でもない。

むしろ、
明るくて、泥臭くて、前に進む話。

溶接の世界はね、
色んな人生背負った人が、
同じ火花の下で同じ汗をかく場所。

そしてここで頑張ろうとしてる人たちに、
僕は心から言いたい。

「いけるよ。」

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この記事の内容は、現場で長く溶接に関わってきた経験をベースにまとめてるよ。
「この人どんなキャリアなんだろ?」と気になったら、プロフィールで少しだけ覗いてみてね。

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