金属だけが溶接じゃない
溶接っていうと、どうしても「鉄」「ステンレス」「アルミ」みたいな金属を思い浮かべがち。
でも実は、樹脂(プラスチック)だって、ちゃんと“溶接”するんだよ。
たとえば、工場の中でよく見かける白いタンクや配管。あれ、PP(ポリプロピレン)や塩ビ(PVC)でできてるけど、ネジや接着剤で止めてるだけじゃなく、実は「溶接」でつないである部分も多い。
「え? プラスチックって接着剤じゃないの?」
……って思った人、結構いるんじゃないかな。
でも現場の人からすれば、接着剤よりも溶接のほうが安心だったりする。
プラスチック溶接の現場はこんな感じ
現場でよくあるのはホットガス溶接。
ヒートガン(熱風機)を片手に、樹脂の棒をくるくる送りながら、柔らかく溶かして接合していく。
「棒入れが下手だと、ガサガサになるぞ」
「温度が低いと付かないし、高すぎると焦げるぞ」
…って、先輩に横から言われながら練習する。これがまた難しいけど、上達すると面白い。
タンクの内側なんか、まるで「おにぎりの海苔」を貼るみたいにパーツを溶接していく。
これ、金属とはまた違った感覚で、やり始めるとクセになる人も多いんだよね。
どんな製品を作るの?
「プラスチック溶接って、実際にどんなモノを作るの?」
って、イメージ湧かない人も多いはず。
実は、現場ではいろんな製品を作ってるんだ。
製品 | 用途 |
---|---|
薬品タンク | 化学工場で使う。酸やアルカリに強いPPタンクを溶接して作る |
排水処理設備の配管 | 工場の排水ライン。塩ビ管の接合部を溶接することも |
ダクトやフード | 換気設備。ガスや粉塵を逃がす大きなフードやダクト |
水槽(養殖・研究用) | 養殖場や研究室で使う大型水槽。アクリルやPPを溶接 |
工業用トレイ・治具 | 工場ラインで使う部品トレイや専用ケース |
自動車内装部品(超音波溶接) | メーター枠、ドアの内張り、コンソール部品など |
看板やディスプレイ(アクリル加工) | 立体的な看板や店舗の装飾。アクリルを溶接して形を作る |
現場で使われるシーン
工場のメンテナンス部門
タンクの割れ修理や、配管の追加工事でプラ溶接が活躍。
化学プラントや食品工場の設備屋さん
塩ビやPPでフードや配管を溶接して現場に据え付け。
アクリル加工の町工場
ケースやディスプレイ、展示用の透明カバーを作るとき、アクリル板を溶接。
自動車工場(量産ライン)
バチッと超音波溶接で部品同士を一瞬で接合。金型でプレスするだけじゃなく、こういう溶接も実は使われてる。
プラスチック溶接の種類
プラスチック溶接にもいろんな種類があるよ。
現場で多いのは手作業だけど、工場では機械溶接も多い。
種類 | 特徴 |
---|---|
ホットガス溶接 | 熱風で樹脂と棒を溶かしてくっつける。職人技。 |
超音波溶接 | 小さい部品をパチっと一瞬で接着。自動車の内装パーツなどで使う |
熱板溶接 | 加熱した板で樹脂を溶かして、部品同士をドッキング |
振動溶接 | 部品同士を「ズズズッ」と擦り合わせて、摩擦熱で溶かす |
高周波溶接 | 電波を使って内部から分子を振動させて加熱。フィルム製品などに使う |
金属溶接と何が違う?
金属溶接をやってる人なら、最初はこう思うはず。
「え、温度低すぎない?」
「棒材って言っても、これプラスチックじゃん!」
そう。プラ溶接は、金属とはまったく勝手が違う。
項目 | 金属溶接 | プラスチック溶接 |
---|---|---|
温度 | 1000℃以上が多い | 200~300℃程度 |
溶接棒 | 金属の棒 | プラスチックの棒 |
難しさ | 高度な技術が必要 | 素材選びとコツが重要 |
プラスチック溶接のコツと注意点
材料を間違えない
PPとPVCは溶け方が違うから、別々にしないとダメ。
温度管理は命
焦げる寸前が一番きれいに付くけど、やりすぎると炭になる。
送りは一定に
棒材をガタガタ送り込むと、仕上がりがバサバサになる。
溶接だけど“ものづくり”
プラスチック溶接は「つなぐ作業」だけど、実は製品そのものを形にする工程でもある。
鉄骨の溶接だと「建物の一部」になるけど、プラ溶接は「完成品」になることが多い。
たとえば、工場で使う大型の薬品タンク。
これは一枚の板から作るわけじゃなく、パーツを作って、全部溶接で組み上げる。
「丸い部分は、ヒートガンで曲げて形を作ってから溶接」
「底板と側板は、V溝を削って棒を入れて溶接」
こんな感じで、職人が一個ずつ手作業で作っていく。
まとめ
「プラスチックの溶接なんて、接着剤でいいでしょ?」
…なんて思ってた人は、ちょっとイメージ変わったんじゃない?
プラ溶接って、現場じゃ結構重宝される技術。
これができると、現場で「お、樹脂もできるのか」って頼られることも増えるよ。
金属だけじゃなく、樹脂もつなげる職人になると、
仕事の幅がぐっと広がる。
金属も樹脂も全部ひっくるめて“つなぐ技術”をかき集めて、仕事に活かそう。