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溶接工の賃金を考える
一口に溶接の仕事をしていると言っても、さまざまな種類の溶接職人さんがいます。
自分はこれまで関わってきた溶接職人さんに時給や給料を必ず聞いてきました。今思えばかなり失礼だったんですけどね。半人前にもかかわらず、どんな溶接の道に進めば稼げるか考えてばかりいたんですよ。今回は簡単にこれまで聞いてきたデータを元に稼げる溶接の業種を紹介してみたいと思います。
と、その前に国土交通省が公表している「平成28年2月から適用する公共工事設計労務単価について」をご覧になってください。こちらのPDFファイルの5ページ目に地域別溶接工の単価が書かれています。
平成28年2月から適用する公共工事設計労務単価について
さて、ご覧になっていただけでしょうか。他業種と比べて溶接工の単価って悪くないですよね。これは公共工事についての事なので関わりの無い方もいるでしょうけど、溶接工の1日あたりの単価はこのくらいって覚えておいて下さい。では本題に行きます。
注:あくまでも聞いた話+偏見のエッセンスが混じっておりますので参考程度にしてくださいね
それほど稼げない溶接屋さん
ラインでの流れ作業
もうロボットに任せて下さい。
40年勤めても溶接技術は勤務開始1ヶ月から平行線です。スポット溶接か半自動溶接で繰り返し同じ部分の溶接。大きめの企業でこんな溶接してる人がいますね。「何の仕事してるの?」と聞かれても「溶接」とは言わずに会社名を答えるでしょう。給料は月給がほとんど。10年勤めても週休二日勤務で手取り10数万でしょう。
2輪車のフレームなどお決まりの形しかない作業
すでに加工してある丸パイプや角パイプを拘束治具に並べてビビッビビッと溶接するだけの作業はあまり個人の能力に関係なく製品が出来ていくので高給は望めません。溶接強度や外観を考えなくなってる時点で稼ぐ溶接工から離れています。自転車、バイクなどでも高品質な溶接が求められる製品もありますけど、世界に一つのようなオーダー物でなければ飛びぬけて稼げるわけではありません。製造工程を管理するような立場にならないと手取り20万の壁は超えられないでしょうね。
薄物プレス加工をして溶接もする量産作業
レーザーで切り抜いた板をロール加工したりプレスブレーキで曲げたりした物をティグや半自動でサラサラ~っと溶接していく作業。プレス作業は作業者の技術と言うより機械の性能でほどほどの物が出来ます。それを弱い電流で溶接していきます。これを延々と繰り返していく日々の仕事。配電BOXや機械のカバー、空調ダクト、業務用厨房関連あたりこんな感じですね。製作にはどこの会社にでもある機械を使いますので特に際立った技術や特徴もなく量産命で突き進みます。給料を日で割ると1日1万円。これが限界か。
溶接後にたいした検査や試験などが無い溶接屋
TIG溶接、半自動溶接などを使う普通の溶接工ですが誰でも出来る仕事の延長線。外観だけを重視しがちで、同僚などから上手いと誉められると天狗になります。その勢いは溶接経験5年で溶接界の頂点に上りきった!と思ってる人がけっこういるもんです。わりと大きめの会社勤務の方に当てはまる傾向が強いと思います。ベテランと呼ばれるくらいの経験の既婚者で30万稼げるかどうか。こーゆう仕事は溶接技術よりも会社の力が給料を左右しますね。
なんでも出来る風の一人親方
溶接経験を積み、コネや人脈が増えると一人親方として独立したくなります。「広い知識を持って何でも出来る」をセールストークに営業しては仕事にありついていくのが定番なんですけど、やはり広く浅い知識では高度な専門的な仕事は出来ません。よく受ける仕事は現場で軟鋼のアングルやフラットバーなどを使用する手すりや簡単な階段、配管のサポート類、駆動式機械の修理など浅い知識でも出来そうな作業。仕事さえ続けば1日2万円程貰って収入自体は勤め人より多いのは間違いないんです。でも個人事業主であったり自営業なので福利厚生の部分で支出が多くなり手取りとしてはけして多いとは言えなくなるケースが多いです。どこかの企業に専属で入れる場合がありますが、それはすでに独立してる意味が薄れ「正社員より待遇の悪い溶接できる人」でしかないので収入環境ともに寂しいモノになる可能性があります。もし誰にも負けない何かの技術があれば話は変わってきますが、ごく一握りの人達でしょう。
たくさん稼ぐ溶接屋さん
配管溶接工
配管を専門に溶接する人です。当然、溶接後の放射線検査や超音波検査は楽々クリア。肉眼では見えない障害物の裏側を溶接したり高所作業も日々セットになります。サニタリーパイプなどの肉厚1ミリ前後の材料を溶接したり肉厚50ミリを超えるような配管まで様々。ごく普通の配管専門の会社で賃金は時給1500円~3000円くらい。検査の厳しいプラントの現場に入れるような人材ならもっと稼げます。原子力発電所の重要部を溶接してる方は時給6000円以上だと言ってました。8時間に満たない勤務が普通で、それなのに4万前後の日当かよ・・ 原発は神の領域ですが、普通にシビアな配管を巻いてる方で独立してる人なら月に50万以上は稼ぐでしょう。トーチを右手で持っても左手で持っても同じビードでウィービングもしくはローリングできないと駄目ですけどね。普通じゃ10年やっても絶対にできないレベルの溶接。まさに専門職。
展開、板金、溶接、仕上げまでをこなす職人
ようは図面だけ貰ったら製品にまで一人で出来るという事です。製缶の溶接を主にこなしてる方には多いと思いますけど、他ではやりたがらない特殊な形状だったり工程を読み間違えると大失敗につながるような仕事でないと収入は大く望めません。これもまた10年やそこらじゃ出来ませんね。まずCADを使い図面を展開をします。次に材料を切断、曲げ、ロール加工などをします。そして溶接。さらに仕上げにバフ研磨や酸洗い仕上げ、電気仕上げをします。1つ1つが専門職なので全てマスターするにはいくら頑張っても出来ない人もいるでしょう。しかしなんとか一人前になれば仕事の幅は広く、技術力次第では相当に稼げるのです。ちなみに手前ミソで悪いのですが、自分はここに該当します。勤め人の頃は見習い日当6000円で始めて20年で日当24000円までになりました。現在は独立したので労働時間は日に10時間を超えますが日当だと3万~4万にはなります。
造船所での溶接
造船いけば稼げるぞ~とか昔はよく言ったモンです。現在は結構賃金に貧富の差があるようで(結局は会社力の差なのかな?)見習いでは当然稼げずボロ雑巾のように毎日真っ黒になりながら毒を吸いまくります。3年くらいである程度は出来るようになってきますが、いかんせんベテランさんのアーク技術、半自動技術が凄い。稼ぐ人は常識を超越したような盛り上げをスイスイこなして日当3万かっさらいます。配管工よりも仕事のバリエーションは多く、転職しても潰しがききます(配管工は配管しか出来ません)。班長から這い上がり、組長なんて呼ばれるポジションまで上り詰めたらマイホームでも買いましょうか~。普通の平社員でも30代で40万以上稼ぐ人が普通だと思います。
溶接工は転職で技術を上げていく
転職と聞くとマイナスなイメージを持たれるかもしれませんが、溶接工が違う分野の溶接工に転職するのはマイナスではありません。一つの会社に長く務める事は確かに良い事です。しかし多くの場合、作業内容がマンネリ化して向上意欲が無くなってきたりと「やる気」に繋がる部分が薄れてきます。ダラダラと毎日の仕事をこなせばそれで良いと考えるのなら現状を維持して下さい。しかし、たとえ給料が上がらずとも今後の為に技術の向上を目指したい方や、自分のスキルを最大限に評価してくれる会社を探したいなら行動するべきです。今の仕事環境で満足し、現状維持を続ける事は守りや安定ではありません。攻めていく事が今後の自分の守りになります。終身雇用なんてひと昔前の当たり前です。どんなに大きな企業に勤めて頑張っていても職を失う事はある。これからの溶接工の生き方は安定収入より安定した技術を持つ事が重要なのは間違いありません。仕事よりプライベートが大事とかよく聞きますけど、どっちも満たされたほうが良いに決まってる。良い職場で働く事が、生活の全てを変えていくはずです。
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