広島県編|造船と鉄鋼の現場に根ざした“海の溶接”

広島って聞くと、平和公園とかお好み焼きが思い浮かぶかもしれないけど――
この県、じつは「鉄と船の聖地」なんだ。

造船、鉄骨、プラント、重機…とにかく「でっかいもん」を作る現場が集まってて、
そのどれもが、溶接抜きには語れない。

今回はそんな広島の溶接現場を、港から工場の中までぐいっと掘り下げていくよ。

主に盛んな業種とその背景

造船業(呉市周辺)

呉といえば、昔から海軍の町。今でも大型の船を組む現場が残っていて、
厚板溶接やサブマージアーク溶接が日常的に行われてる。

開先バッチリ、母材ドカン、入熱ゴリゴリ。
そんな世界で、職人たちは今日も火を飛ばしてる。

しかも、ただ溶接するだけじゃなくて、艤装や仕上げまで含めたトータルな現場力が求められる。
「段取り8割」ってよく言うけど、広島の造船はその典型だね。

鉄鋼・構造物製作(福山市など)

福山周辺では、橋梁・港湾・建築鉄骨の製作が盛ん。
構造物って言っても、サイズ感がちょっとおかしい。

「これ船じゃないの?」って思うくらいの鉄骨に、
被覆アークや半自動で分厚いビードをぐいぐい重ねるのがこのあたりのスタイル。

現場によっては立ち上がりの中に潜って溶接することもあって、
体力も度胸もないとキツい。
でも、それだけに“やりきった感”がクセになる。

自動車・部品製造(広島市〜東広島)

実はここ、某有名自動車メーカーのお膝元。
スポット溶接・ロボット溶接による車体製造が進んでいて、
TIGやMAGも場面に応じて使い分けられてる。

「ロボットが溶接してるから簡単なんじゃ?」って思った人、甘い!
ティーチングやトラブル対応はぜんぶ人間の腕の見せどころ。

熟練者が1mm単位のズレを感覚で補正してるような、
“ロボットと人の共存”現場が広がってる。

地域別 溶接業種マップ

地域 主な産業 溶接の特徴
呉市 造船・艤装工事 厚板・アーク・サブマージアーク。高所・屋外作業あり
福山市 鉄骨・構造物製作 建築・橋梁向け。被覆アークと半自動の多層盛り中心
広島市〜東広島 自動車・部品製造 スポット溶接・MAG・TIG。量産と保全業務が混在

現場のリアルと傾向

広島の現場はとにかく“でっかい”。
板も重いし、部材も巨大。風も吹くし、陽も照る。
「自然と闘いながら溶接してる」って感覚に近いかも。

とくに造船や鉄骨系では、高所作業・屋外作業が当たり前。
足場の上で火を飛ばすってのは、ちょっとした非日常だよね。

それに加えて、潮風・湿気・鉄粉――
仕上げ精度と耐久性を両立させなきゃならない環境がそこにはある。

大型機械と厚板の現場。広島に根付く重工業系の技術

広島=造船ってイメージが強いけど、実はそれだけじゃない。
大型プラントや特殊車両、クレーン、搬送装置なんかもかなり盛ん。

特に福山・呉エリアでは、サブマージアーク(SAW)や自動溶接機を活用した高入熱の厚板溶接が主力。
装置と職人の連携で、図面にない微調整をこなしていくのが“工場力”なんだ。

「装置だけでもダメ、人だけでもダメ」
そんな絶妙なバランスで、一品モノを安定して仕上げていくのが広島のやり方。

広島県の溶接工の賃金水準は?

厚労省の統計によると、広島県の溶接工(正社員・男性)の平均月収は約28.1万円で、これは全国平均(約29.4万円)をやや下回る水準。

ただし、造船や重工系の現場では月収35万円以上の職人も珍しくない。
夜勤・出張・資格持ちの条件が揃えば、かなり高水準の給与になることも。

「地方だけど稼げる」って噂を聞いて、県外から移ってくる人も少なくないよ。

この地域で働くには

広島の現場で求められるのは、とにかく「ちゃんと動ける人」。
溶接の腕ももちろん大事だけど、段取り・報連相・安全意識が超重要。

あると役立つ資格はこんな感じ:

アーク溶接特別教育(基本中の基本)

玉掛け・床上操作式クレーン(大型部材の取り回しに必須)

JIS溶接技能者(TN-P, SA-2Fなど)

高所・酸欠作業主任者(屋外・船内対応)

若手よりも現場慣れした経験者が優先されることも多くて、即戦力の評価は高め。

おわりに

広島の溶接って、正直“派手さ”はないかもしれない。
でも、でっかい鉄の塊と向き合って火を飛ばす姿には、**“本物の現場力”**が詰まってる。

潮風にさらされながら、足場の上でビードを引く職人。
巨大な構造物を「自分の手」で組んでいく技術者たち。

海と鉄と火花。
それが広島の、もう一つの風景なんだと思う。