愛知県編|自動車と精密製造を支える“ものづくり溶接”の最前線

愛知県っていえば、やっぱり「ものづくりの県」。
なかでも自動車産業の中心地として、日本中どころか世界中から注目される存在なんだ。

トヨタをはじめとするメーカー本体はもちろん、その下にぶら下がる部品メーカーや下請け企業も無数にあって、
その数だけ溶接の現場も広がってる。

でも、“自動車だけじゃない”のが本当の愛知の奥深さ。
精密機械、航空、そして超繊細な箔溶接――
いろんな技術が根を張ってる“職人県”でもあるんだ。

主に盛んな業種とその背景

自動車製造・車体ライン(豊田市・岡崎・刈谷・碧南など)

愛知の代名詞ともいえるのが、やっぱり自動車製造。
豊田市を中心に、県内にはトヨタ関連の工場があちこちに点在してる。

このエリアの特徴は、スポット溶接やロボットによるミグ・マグ溶接がライン化されてること。
自動化が進んでるとはいえ、熟練者によるティーチングや設備保守が欠かせない。

とくに「同じ条件で何万台も溶接する」って現場では、
火口の角度やスパッタの出方みたいな微妙なポイントを見極める目が必要なんだ。

自動車部品製造(豊橋・安城・西尾など)

本体を支えるのが、部品メーカーの多さ。
この地域では、シャーシ・エンジンマウント・排気系などの製造が中心で、
半自動溶接やロボット溶接ががっつり活用されてる。

ただし「ロボ任せでOK」ってわけじゃなくて、
JIS資格を持った人の目視確認や仕上がりの手直しもけっこうある。

量産ラインの裏側には、ちゃんと“人の技”が息づいてるんだ。

精密機械・航空宇宙産業(一宮・小牧・春日井など)

もうひとつの顔が、航空・精密系の産業。
このあたりの工場では、アルミやチタンのTIG溶接やレーザー溶接なんかも使われていて、
とにかく“繊細さ”が求められる現場が多い。

焼き色や歪みの管理、薄板どうしの合わせ方など、
一発勝負の仕事も少なくない。
まさに“腕一本”で勝負する世界がここにある。

箔溶接の聖地、じつはここにも

愛知っていうと自動車のイメージが強いけど、
実は「箔溶接」っていう超ニッチで繊細な技術でも、日本の中でも有数の拠点なんだ。

たとえば名古屋市内や一宮エリアには、10μm以下のステンレス箔やチタン箔をTIGで溶接できる工場がある。
しかも、「研究用途」や「医療装置の開発」なんて特殊案件にも対応してる。

こういう現場では、火口の立ち上げ一つで材が飛ぶし、
ほんの一瞬の加熱で全部アウト。
言葉で「繊細」とか言うのも失礼なくらい、ギリギリの技術勝負。

たぶん、全国で「箔をまともに溶接できる職人」は、両手で数えられるくらいなんじゃないかな。

ロボットがいても人の目は消えない

「愛知の工場って、もう全部ロボットじゃん」って思うかもしれないけど――
現場に入ったら、その考えはすぐに覆される。

たとえばティーチング。
これってロボットに「ここをこう溶接してね」って教える作業なんだけど、
開先のズレ、アークの当て方、火口のクセまで、感覚の世界がある。

不具合が出たときに判断するのも、結局は職人の経験。
「止めるか動かすか」の判断を任されてるのはロボじゃなくて人なんだ。

現場ではいまも、「まず自分の目で見る」って文化がちゃんと残ってる。
ロボットが相棒であって、代わりじゃない――
それが愛知のライン現場のリアルなんだよね。

地域別 溶接業種マップ

地域 主な産業 溶接の特徴
豊田・岡崎・刈谷 自動車製造・溶接ライン ロボットによるスポット溶接やMAG溶接が中心。ティーチングも含む
安城・西尾・豊橋 自動車部品製造 半自動溶接やJIS資格者によるライン品質管理が重視される
小牧・一宮・春日井 航空・精密機器・箔加工 極薄板TIGやレーザーなど高難度溶接。研究・医療向けも対応

愛知県の溶接工の賃金水準は?

厚労省の統計によると、愛知県の溶接工(正社員・男性)の平均月収は約30.8万円で、これは全国平均(約29.4万円)をやや上回る水準。

とくに自動車・航空系の溶接職では、技能や資格によって30万円台後半〜40万円台に届くケースもある。
工程や設備に応じて残業の波はあるけど、全国的に見てもかなり安定した待遇が得られる地域だよ。

この地域で働くには

愛知で溶接の仕事を目指すなら、こんなスキルが武器になる

JIS溶接技能者(とくにSA-2FやTN-Pなど量産系の資格)

アーク溶接特別教育、ガス溶接技能講習

ロボット操作・ティーチング経験

品質検査や工程管理の実務スキル

さらに、トヨタグループ系の工場では安全ルールや標準作業の遵守がかなり厳しくて、
「ただ溶接できる」だけじゃなくて、報連相や段取り力も評価ポイントになる。

おわりに

愛知の現場って、ほんとに多彩。
“ピッタリはまる量産ライン”もあれば、“0.2mm単位の合わせが命”みたいな精密現場もある。

そしてその中には、全国でも数えるほどしかできない“箔溶接”の匠たちもいる。

自動化が進んでも、人の技が消えてないのがこの県の強さなんだろうね。
愛知の職人たちは、日々の1本のビードが「トヨタ品質」や「航空機の信頼」につながってることをちゃんと知ってる。

それを、黙っていつもの手つきでこなしていく。
その姿にこそ、この土地の“ものづくり魂”があるのかもしれない。