北海道編|広大な大地と寒冷地仕様の中で磨かれる「鉄骨・配管・造船」の現場力

北の大地・北海道は、その広さゆえに「都市圏」と「地方圏」で溶接の仕事も大きく分かれる。札幌・苫小牧・室蘭・函館などの工業拠点では、鉄骨・造船・配管などさまざまな溶接業務が行われていて、寒冷地特有の施工条件や広域対応力が求められる。

この記事では、北海道における溶接の主な業種、現場の特徴、地域ごとの違い、そして賃金相場までを、現場目線で掘り下げてみよう。

主に盛んな業種とその背景

鉄骨製作・建築関連(札幌・小樽・旭川など)

北海道の建物は、とにかく雪と風に耐える必要がある。
だから鉄骨構造の割合が高くて、柱や梁の接合部にもガッチリ溶接が入る。

札幌周辺じゃ、中〜大規模のビル・工場・倉庫が多くて、工場内での鉄骨製作+現場での半自動溶接っていう流れが定番。
特に立向・上向の姿勢でしっかりとビードを入れる技術が重視される。

職人たちは、姿勢や角度が変わっても精度を落とさない腕を持っていて、
「北海道の鉄骨屋は安定してるよね」って道外からも言われる。

プラント・配管設備(苫小牧・室蘭・石狩湾新港など)

苫小牧港を中心に、バイオマス発電・製紙・化学工場・LNG基地みたいな大規模プラントが集まってる。
こういう現場じゃ配管溶接がメインになることが多いんだけど、
ステンレスや高圧配管でのTIG溶接や、肉盛り補修なんかも日常的にある。

冬場は風が吹けば一瞬で母材が冷えてしまうし、
ちょっと油断すれば結露→欠陥ってなるから、段取りと保温管理の腕が問われる。

それでも、プラント系に強い溶接屋が多いのは、北海道の大きな特徴のひとつだよ。

造船・港湾設備(函館・室蘭)

函館や室蘭では、昔からの造船業の技術が今でも生きてる。
新造船こそ少なくなったけど、今でも艤装・修繕・補強工事があって、
厚板への被覆アーク・半自動・サブマージアーク溶接がしっかり使われてる。

港湾工事や海洋施設の補修も多くて、上向き・下向きの開先溶接に強い人材が残ってるのも魅力。

地域別 溶接業種マップ

地域主な産業溶接の特徴
札幌・小樽・旭川建築鉄骨・橋梁・設備製作半自動溶接による構造部材の立向・上向溶接が中心
苫小牧・室蘭プラント・配管・発電関連TIG・アークによるステンレス管の精密溶接が多い
函館・釧路港湾設備・艤装補修厚板溶接や開先処理が多く、手溶接の技術が求められる

現場のリアルと寒冷地ならではの課題

北海道の現場って、なんといっても自然との戦い。
とくに冬場は、ちょっと放っておけば母材が結露したり凍ったりして、もう溶接どころじゃない。

ビード表面に霜がつく

ヒートガンで乾かしても再び結露

防寒着が邪魔で姿勢が崩れる

みたいな、夏には考えられない現場トラブルがゴロゴロ出てくる。

だからこそ、段取りの良さ・タイミングの見極め・保温処理の工夫が命。
こういう環境で仕事してる人たちは、自然相手の対応力が桁違いなんだ。

広い現場を支える“多能工”と応援文化

北海道の現場じゃ、ただ「溶接だけやってりゃいい」ってわけにはいかない。
鉄骨・配管・機械据付・断熱まで、なんでもこなせる“多能工タイプの職人”が当たり前に活躍してる。

たとえば鉄骨屋にいても「今日から配管やって」なんて話が飛んできたり、
足場の片付けからスタートして、午後はTIGで小径パイプなんて日もある。
これが道内では“普通”だったりする。

そんなスタイルで育った道民職人は、道外に応援で行ったときも対応力がすごいって言われることが多い。
「北海道の職人って、一人で何でもやってくれるよね」って、現場監督からの信頼も厚い。

寒さに耐えながら育った技術もすごいけど、
こうした“柔軟さと段取り力”を備えた人材が多いのも、北海道の強みのひとつなんだ。

北海道の溶接工の賃金水準は?

厚生労働省のデータによると、北海道の溶接工(正社員・男性)の平均月収は約26.1万円。
全国平均(約29.4万円)よりはちょっと低めだけど、冬場の出張工事・補修現場は日当2万円前後もある。

特にプラント定修や港湾補修では、ベテラン職人の需要が高くて、
「道民応援部隊」は本州側の現場でも重宝される存在になってる。

おわりに

北海道の溶接現場は、気候も広さも過酷だけど、そのぶん現場で鍛えられる力が大きい。
寒さ、距離、段取り、なんでも自分で考えて動けるようになる。
それが北海道で育った職人の底力につながってるんだ。

溶接の技術はもちろん、段取り力、応援文化、多能工としての柔軟性――
どれも他県にはない、北海道ならではの「人の強さ」なんだよね。