板厚と開先角度の関係表|突合せ溶接に必要な開先加工の基準

開先角度とは、突合せ溶接で母材を開く角度のこと。板厚に応じて適正値が決まっていて、間違えると溶け込み不足やコスト増につながる重要な条件なんだ。

「これ、開先どうする?」「角度は?ルートフェイスは?」――現場でこんな会話、何度も聞いたことあるよね。この記事では板厚と開先形状(V・Y・Xなど)の関係を一覧表で整理。図面確認や現場加工の参考になるように、角度やルート・ギャップの目安もまとめたよ。

開先(かいさき)とは?ざっくり説明

開先とは、板やパイプの接合端を斜めに削った“溝”のこと。目的は溶接金属がしっかり入り、強度や溶け込みを確保することなんだ。

もし開先加工をしないまま溶接すると、一見キレイなビードでも板厚に対して全然溶け込んでいなくて割れたり、アークが定まらず蛇行したビードになったりする。だから「やった方がいい」。ただし角度や深さが条件に合ってないと逆効果だから注意が必要なんだ。

よく使う開先の種類と特徴

開先形状とその使い分け

開先形状 特徴・使い分け
V開先 一般的な開先。表面からの溶接、裏側から溶接不可の場合、全厚溶接なら裏波溶接か裏当て金溶接の場合によく使われる。
Y開先 表側だけ開けるY字型。裏波不要、裏面からの溶接不要の場合に使われる。
X開先 両面からV開先をとったもの。厚板の全溶込み溶接や、裏はつりを行うときに用いられる。
I形 開先なし。板厚が薄い時にそのまま突合せ。表側だけか裏表かは条件による。
U・J形 加工は難しいが溶接金属量が少なくて済む。V開先だと板が厚くなるにつれ開先幅が増えてしまうけれど、U開先なら開先幅は一定の所から変わらない。

板厚と開先角度・ルート寸法の関係早見表

以下は一般的な手溶接(TIG・被覆アークなど)を想定した目安。実際は必ずWPS(溶接施工要領書)や仕様書に従ってね。

板厚(mm)開先形状開先角度(°)ルートフェイス(mm)ルートギャップ(mm)
6以下I形なし00〜1
6〜12V開先60〜70°1.01.5〜2.0
12〜20X開先60〜70°×21.52.0
20〜30X開先60°×22.02.0〜3.0
30超U開先25〜40°2.0〜2.52.0〜3.0

裏はつりの時に注意したい点

項目 注意点・ポイント
目的 裏面に残った未溶着部やスラグ、酸化被膜を除去して、健全な再溶接部を作る。
やりすぎ 板厚が減りすぎて溶け落ちやアンダーカットの原因になる。過度な除去はNG。
浅すぎ スラグや酸化物が残って融合不良につながる。
タイミング 表溶接後すぐに行うのが基本。放置すると酸化皮膜が硬化して除去困難になる。
施工条件 裏面にアクセスできる構造が前提。狭隘部では工具が届かない場合もある。
ありがちな誤解 「裏はつりしなくても溶ける」は危険。金属の流れ込みだけでは完全にならないことがある。

現場あるある:角度や幅をあまく見るな

手作業でやるしか無い場面で頑張って削ったのに、「角度足りなくね?」と半笑いの検査に言われる。

裏波が不安でルートフェイス少なくしたら、裏波と言うより裏にはり付いてる金属の塊くらい出た。

「誰でもできるだろ」と新人にやらせたら、所々めっちゃ深い、幅バラバラ。無表情で立ち尽くした。

「プラズマ溶接なら開先いらないっすよ」と言うけど、当然そんな設備は無い。

開先少なめ、電流増し増し! → 怒られるを超えて絶叫される。

最後に、開先は「角度」と「肉盛り量」のバランスがカギ

角度が広ければ肉盛りしやすいけど、溶接金属が多くなってひずみやコストが増加。狭いと今度は溶け込み不足。つまり開先は「角度」と「肉盛り量」のバランスが命なんだ。

教科書通りの基準は絶対大事。でも現場では条件や姿勢によって微調整が必要なことも多い。経験を重ねて「ちょうどいいさじ加減」を掴むのが、腕の見せどころなんだ。

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