見知らぬ爺さんのお願いで薄板溶接してみた
仕事中、背後に見知らぬ爺さんがいきなりいた。
溶接作業は騒音が鳴り響くし、かなり集中して作業してるので人が近づいてきても気がつかない事が多い。
なんとなーく溶接中の遮光ガラスに人影が映った気がしたので振り向くと、
爺さん「ここ、溶接やれるのか?」
瞬間的にわかった。よくあるパターンだ。
僕みたいに一人で細々と溶接してると、時々このような来客が来るんですよ。
この流れだと当然お金にならない修理を頼んでくる事は目に見えている。
まあしょうがない。ほぼ無料で家庭の金属製の調理器具や家具なんかはいつも直してきたからね。
地元じゃ口コミで広まってるんだろ。あそこの溶接屋は頼めば何でもやるぞって。
ありがたき幸せです!
さて、お爺様が持ってきたアイテムはこれだ。
今川焼き?の原料?を鉄板にトロトロ流すやつだ。正直何に使うかしっかり聞いてなかった。
ようは取れた部分がくっつけば良いみたい。
よく見ればこれハンダかロウ付けでくっ付いてたんじゃないの?食品器具だけど接着剤を使ってるかもしれない。
つーかその前にこの金属は何なんだよ。爺さんに聞いたら「鉄かもな」だって。
絶対に鉄じゃねえよ!!!
食品器具なので多分ステンレス。この薄さならアルミのほうが楽だったのになぁ。アルミならジュースの缶でも普通に溶接出来るからね。
これ本来はスミ肉の盛りで溶接と言うか接着されてたんだろうけど、この薄さでそれは無理。少なくとも僕には無理。TIGでは無理。
わざわざノギスで測ってないけど板厚0.5mm以下なのは間違いない。マイクロプラズマ溶接機持ってきて欲しい。
連続溶接で漏れがなければ方法は問題ないらしいので内側を溶接する事にした。
ティグの電流10Aでとりあえず仮付けしてみよう。
10Aなんて溶接面無しで直接アークを見ても大丈夫なんじゃないかってくらいの電流だけど、この板厚だとそれでも怖い。一瞬でドロっと溶け落ちそうで不安になる。
板を重ねて溶接するのは楽だけどこの条件だと半端なく集中力が必要。いきなり板同士がパカーッ!と開きそうだ。
しかしもうやるしかないのでトーチのスイッチを何度も押し捲りの手動パルス&どうにかくっ付けウィービングで一気に全部付けた。
ビード表面を削ってから、ここにスライドするプレートを差し込んでバネで留めて完了です。
なんとかなってホっとしました。
パイプ椅子や使い慣れた台所用品とか修理をお願いしてくる方って結構います。
直ると皆さん良い笑顔をしてくれます。きっと愛着のある品々なんでしょうね。修理でお金払うなら新しいの買ったほうが安くて得です。
きっとお金の問題だけでは無い思い入れなどがあるんでしょうね。
まあ、僕はお金を頂かないのでよけいに笑顔を頂ける気がしないでもありませんが・・
しかし爺さん。
この器具だけは新しいの買えっての。