「なんか今日のビード、酸化してるな…」
そんな時に疑いたいのが――そう、ガスの種類と流量。
溶接って、電流やトーチの角度ばかり気にしがちだけど、
実はガスひとつで仕上がりがガラッと変わるんだ。
TIGでも半自動でも、ガスを“正しく使いこなせる”とビードが安定して気持ちいい。
この記事では、現場のリアルを交えながら、TIG・半自動・混合ガス、
そして地味に超大事な「流量」までまとめていく。
あえて簡単な説明でいくから、ゆる〜くでも覚えておいてね。
シールドガスの役割ってなんだ?
まず、ガスの目的はアークと溶融池を空気(酸素や窒素)から守ること。
でもね、ただ守るだけじゃない。
アークの形・溶け込み・スパッタ・見た目――全部変わってくる。
ざっくり言うとこう👇
- TIG溶接:アークを安定させて酸化を防ぐ。見た目命。気密性高い。
- 半自動溶接:スピードと効率が大事。コスパ重視。肉盛り得意。
つまり、守り方も目的も違うんだ。
“ガス=空気の盾”って思っておけばイメージしやすいかも。
TIG溶接で使うガスの種類
TIGといえばアルゴン、これはもう定番。
でも、ちょっと混ぜ物を変えるだけでアークの性格がガラッと変わる。
| ガスの種類 | 主な使いどころ | 特徴 |
|---|---|---|
| アルゴン(Ar) | TIG全般 | 王道。アークが安定して、ビードがキレイ。 |
| ヘリウム(He) | 肉厚材・アルミ・銅 | 熱が強く、溶け込みが深い。ちょっと高級。 |
| アルゴン+水素(H₂) | ステンレス | ビードがピカピカになる。割れやすい材は注意。 |
| アルゴン+ヘリウム | 熱伝導の良い材 | 両方のいいとこ取り。コストは上がるけど万能。 |
| アルゴン+酸素(O₂ 5〜10%) | 圧力容器・初層など | アークがグッと集中して、深く食い込む。 |
TIG × アルゴン+酸素 ― 食い込みが欲しい時の裏ワザ
この組み合わせ、知ってる人は少ないけど、効くんだよね。
酸素をちょっと混ぜるだけで、アークの集中力が一段上がる。
圧力容器の初層とか、裏はつり後の根本を“絶対落としたくない”時に使うと抜群。
RT(放射線)検査の手直しでも大活躍する。
💬 現場コメント風:
アルゴンだけだとアークが“ふんわり”。
そこに酸素をちょい足しすると、ビードがズドンと食い込む。
ただし入れすぎると酸化スケール出まくるから、清掃サボると即アウト。
半自動溶接(MAG・MIG・CO₂)で使うガス
半自動は「スピードとコスパの勝負」。
ガスの選び方でスパッタの量も仕上げの手間も全然違う。
| 溶接法 | 使用ガス | 特徴 |
|---|---|---|
| MAG | Ar+CO₂(80:20など) | スパッタ少なめ、アークがまろやか。ビードきれい。 |
| MIG | ArまたはAr+O₂少量 | 非鉄金属用。明るくて酸化が少ない。 |
| CO₂ | 100%CO₂ | コスパ最強。スパッタ多いけど、鉄骨や製缶で主力。 |
💬 現場コメント風:
炭酸オンリーは「荒いけど強い」。
混合ガスは「やさしいけど高い」。
どっちを取るかは現場の雰囲気次第。
鉄骨屋と製缶屋が言い合うとこ、だいたいここ。
混合ガスの使いこなし方
混ぜて使うことで、アークの性格を変える。
“ちょっとの差”が仕上がりを左右するんだ。
| 混合ガス | 向いてる溶接法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Ar+O₂(5〜10%) | TIG | 溶け込みが深い。初層・厚板向け。 | 酸化スケール出やすい。 |
| Ar+CO₂(80:20など) | MAG | スパッタ減・ビード安定。 | ガス代アップ。 |
| Ar+He | TIG・MIG | 熱効率が高く、アルミ・銅系に◎。 | 高価・調整がシビア。 |
💬 現場コメント風:
酸素入りは“食い込み系”、ヘリウム入りは“熱攻め系”。
CO₂混合は“万能選手”。
どれ使っても一長一短だけど、「目的に合えば最強」。
ガス流量の話をしよう
ガスの種類が決まっても、流量をミスると全部パー。
流量管理が甘いと、酸化・ピンホール・裏波不良のオンパレード。
ここが上手い人は、だいたい“職人の香り”がする。
TIG溶接の流量目安
- 標準:8〜12 ℓ/min
- 薄板:6〜8 ℓ/min
- 厚板・屋外:12〜15 ℓ/min
💬 ポイント:
少なすぎると酸化、出しすぎると乱流で空気を吸い込む。
「多ければ安心」は大間違い。
見た目より数値、これ鉄則。
ガスレンズノズル使うならコストの面で若干下げても良いけど5ℓ/minより下げると怖い。
半自動溶接(MAG・MIG)の流量目安
- 標準:15〜25 ℓ/min
- スプレー移行域:20 ℓ/min前後
- 屋外:25 ℓ/min程度(最小限)
💬 現場コメント風:
風あるとつい全開にしたくなるけど、
ガスが強すぎるとアークが吸い上げられて“ビードが細切れ”。
屋内なら20ℓ固定でちょうどいいくらい。
屋外なら流量上げるよりも風を少しでも防ぐ手段を考えたい。
圧力容器やRT対象での流量のコツ
高溶け込みのアルゴン+酸素ガスを使う時は、
通常より1〜2 ℓ/min多めにすると安定しやすい。
アークが強くなる分、シールド範囲が狭くなるからね。
ただし上げすぎは禁物。
“ちょい増し”くらいが一番キレイに仕上がる。
💬 現場コメント風:
数値で合わせて、感覚で微調整。
このバランスが取れてくると、「ガス職人」って呼ばれるようになる。
まとめ:ガスを制する者は溶接を制す
- TIG=アルゴン中心。仕上がりと見た目重視。
- 半自動=CO₂ or 混合ガス。スピードとコスパ重視。
- 混合ガスは“条件次第で最強の相棒”。
- そして、忘れちゃいけないのが流量管理。
ガスって、地味だけど溶接の根幹。
上手い人ほどバルブの音やシュー音で流量を感じ取る。
そのレベルになったらもう、どんな現場でも怖くない。
ん? いや、勘はだめ。
