溶接の世界では、独特な言い回しや専門用語がバンバン飛び交う。 この用語集では、そんな“現場用語”をあいうえお順でまとめて紹介していきます。
「なんとなく聞いたことあるけど意味が曖昧」 「現場で飛び交ってるのに、ついていけない…」 「普通にド忘れ」そんなときに、サッと調べてパッと分かるような、頼れる辞書ページを目指してます。 ※随時追記中
💥 溶接用語集(ア行)
アーク
電極と母材の間に電流が飛び移ることで発生する高温の放電現象。その熱(約5,000〜20,000℃)が金属を瞬時に溶かし、溶接の主要な熱源になるよ。アークの安定性はビード形状・溶け込み・スパッタ量に直結するため、溶接品質を左右する最も重要な要素なんだ。
アークスタート
溶接の開始地点で、安定したアークを意図的に発生させる操作のこと。
TIG溶接では、高周波(HF)スタート(非接触)やリフトスタート(軽く接触して離す)など、母材を傷つけずに始めるための方式が使われるよ。
スタートが不安定だと溶け込み不足やアーク跡につながるため、開始の精度は仕上がりに直結するんだ。
アークストライク
溶接ビードを置きたい場所や開先内ではなく、意図しない母材表面などにアークを短時間でも飛ばしてしまうこと。アーク跡は外観不良になるだけでなく、金属の材質変化(硬化)を引き起こし、のちの欠陥(割れなど)の原因になるから厳禁だよ。
アーク溶接
アーク放電による熱を熱源として金属を溶融・接合する溶接法。被覆アーク溶接棒を使う手溶接、半自動のMAG/MIG溶接、高品質なTIG溶接など、最もポピュラーで多岐にわたる溶接方式の総称だよ。
アーク長
電極の先端と溶融池(溶けている金属のプール)の表面との間の距離。この長さは溶接電圧と密接に関係していて、長すぎるとアークが不安定になったり、シールド効果が落ちたりするから、適切な長さに保つのがポイント!
アフターフロー
TIG溶接などで、アークを停止した後も一定時間シールドガス(アルゴンなど)を流し続ける機能のこと。
アークが消えても溶融池やタングステン電極は高温なので、すぐに空気に触れると酸化(焼け)したり、電極の寿命が大きく縮んだりする。
アフターフローで冷えるまでガスで保護することで、終端ビードの品質を守りつつ、電極の寿命も延ばす、TIGでは必須の設定なんだ。
アンダーカット
溶接ビードの端、つまり溶着金属と母材の境界線の部分が、母材側が溶けて削り取られたようにえぐれて溝状になってしまった状態。溶接棒の動かし方、電流、速度などが不適切だと発生しやすく、強度不足(応力集中)につながる代表的な溶接欠陥のひとつなんだ。
アルゴンガス
TIG溶接やMIG溶接などで主に使用される不活性ガス(シールドガス)。空気中の酸素や窒素から溶融池を強力に遮断して、酸化や窒化を防ぎ、ビードをきれいに、そして健全に仕上げるために欠かせないよ。
圧接(あっせつ)
金属同士を、溶融させずに加熱(または非加熱)と圧力のみで接合する方法。代表的なものに、摩擦熱を利用する摩擦圧接や、古くからある鍛接(熱して叩く)などがあるよ。
アセチレン
ガス溶接(酸素アセチレン溶接)で使用される可燃性ガス。酸素と混ぜて燃焼させると約3,000℃という高温の炎になり、金属の溶断や溶接に用いられるよ。取り扱いには特に安全管理が必要なんだ。
アパーチャ
プラズマ溶接やプラズマ切断機に登場する部品で、電極とノズルの間で絞り込まれる開口部。ここでアークを強く絞り込むことで、集中力の高い高温プラズマを形成できるよ。
板厚(いたあつ)
溶接する材料の厚みのこと。薄板(数mm以下)、中板、厚板(10mm以上など)によって、選ぶ溶接法、開先の形状、電流値、多層溶接の有無など、求められる技術や準備がガラッと変わってくるよ。
イグニッション
溶接機におけるアーク発生の、いわば「点火」の動作を指すイメージ用語。特に自動TIG溶接では、高周波(HF)を用いて非接触で安定してアークを飛ばすことが多いんだ。
位置合わせ
溶接を始める前に、二つ以上の部材同士の位置や角度を、設計図通りにピッタリ合わせる重要な作業。この作業が甘いと、溶接後の歪みや寸法不良、強度不足の原因になっちゃう。治具(じぐ)を使ったり、仮付けを慎重に行ったりするよ。
一層目(いっそうめ)/ ルートパス
多層溶接を行う際の最初に溶接する層。開先の一番奥(ルート部)を溶接するパスのことで、特に完全溶け込みが求められる場合は裏波の形成が求められる、最も重要なパスだよ。ここがキレイにできないと、後続の層の品質も全て台無しになっちゃうんだ。
入熱(にゅうねつ)
溶接によって単位長さあたりの溶接線に加えられる熱エネルギーの総量のこと。入熱が多すぎると、変形・ひずみが大きくなったり、母材の組織が変化して強度や靭性(じんせい)が低下する原因になるから、適切な管理が必須!
ウィービング
トーチや溶接棒を、溶接線に沿って進めながら、同時に左右に細かく振り動かしながら溶接する操作方法。幅広のビードを作りたいときや、開先の隅々まで溶着金属を充填したいときに使う。均一な振幅と速度を保つのが難しい、熟練の技なんだ。
裏波(うらなみ)
完全溶け込み溶接を行った際、接合部の裏面側に現れる溶着金属の盛り上がりのこと。この裏波が均一で綺麗な形で出ていることが、内部まで完全に溶け込んでいる証拠であり、高い溶接技術を持つ職人技の象徴とされているよ。
エンドタブ
溶接試験や、特に高い品質が求められる構造物の溶接線の始点と終点に、一時的に取り付ける金属板のこと。アークスタートや溶接終端での不安定なビードや欠陥(クレーター割れなど)をこのタブ上で処理し、本溶接部を安定させるために使われ、溶接後に切り落とされるよ。
オーバーラップ
溶着した金属が、母材の溶けていない部分の上に単に乗っかっているだけで、母材とうまく融合(溶け込み)していない状態。これも強度不足につながる溶接欠陥のひとつで、電流不足や溶接速度が速すぎるときに起こりやすいよ。
オリフィス
ガス流量計や圧力機器の内部にある絞り穴を指す工学的な用語。TIGやMAG/MIG溶接では、ノズルの出口部分や、ガス流量を制御する流量計の部品として使われるよ。シールドガスの流量や流れ方に影響を与え、シールド性の確保にとても重要な役割を果たしているんだ。
🛠️ 溶接用語集(カ行)
開先(かいさき)
特に厚板を溶接する際に、溶着金属を奥深くまで充填させ、完全溶け込みを得やすくするために、部材の端部をV字、U字、X字、K字などに削って作る溝のこと。開先形状によって必要な溶着量や歪みの出方が変わるよ。
仮付け(かりづけ)
本格的な本溶接を始める前に、部材同士が設計された位置からズレないように、数カ所をごく短く溶接して一時的に固定すること。本溶接時の歪みや変形を防ぐために、非常に重要な工程。この仮付けのやり方(長さ、位置、間隔)で、最終的な品質が大きく左右されるよ。
乾式溶接棒(かんしきようせつぼう)
被覆アーク溶接棒の中でも、特に水分を吸ってしまうと欠陥(水素割れなど)の原因になりやすい種類の溶接棒。使用前には所定の温度で乾燥させ、保管中も乾燥状態(防湿)を保つことが必須とされるよ。
可搬式(かはんしき)
持ち運びが可能なサイズや重量に設計された機械や装置のこと。工場内の移動や、建設現場・橋梁工事などの現場作業で、高い機動性が求められる場合に重宝される溶接機材を指すよ。
仮組み(かりぐみ)
溶接作業に入る前の、最終確認を兼ねた工程。全ての部材を設計図通りに一時的に配置し、寸法や位置関係、形状に間違いがないか、また溶接のしやすさなどを確認・調整する作業。
母材(かざい/ぼざい)
溶接によって接合される元の材料、つまり溶接される主役の金属のこと。溶接時に付け足される溶加材(ようかざい)や溶接棒に対しての呼び名だよ。
角溶接(かどようせつ)/フィレット溶接
部材同士がT字形やL字形に組み合わさる部分を溶接する形式。特に強度が要求される構造物や、一般的な建設構造物で最も多用される溶接形状のひとつだよ。
逆歪み(ぎゃくひずみ)
溶接による熱収縮で起こる歪みを見越して、溶接前に部材をあえて反対方向へ曲げたり、逆角度でセットしておく歪み対策のこと。たとえば溶接後に上方向へ反ると予測される場合は、最初に少し下向きに反らせて仮付けしておく。冷却収縮の力と合わせて、最終的に設計どおりの形状へ近づけるための、経験と調整力が求められる高度な技術だよ。
クレーター
溶接を終えた終端部に、溶融池へ金属が供給されなくなることで中央部分が沈み込み、さらに冷却収縮が重なって生じる皿状のくぼみのこと。
このクレーターの底は金属が最後に固まる箇所で、局部的な引張応力が集中しやすいため、クレーター割れが特に発生しやすい欠陥の発生源なんだ。
クレーター処理
溶接終端でクレーター割れを防ぐために行う操作や制御の総称。
手溶接(被覆アーク溶接)では、運棒で少し戻しながら金属を補いつつ、アークを急に切らないようにする技術が使われるよ。
TIGでは、ダウンスロープで電流を徐々に下げて溶融池を埋めながら消弧するのが一般的。MAG/MIG溶接でも、機種によっては終端部を埋める「クレーターフィル」機能が搭載されている場合があるんだ。
高張力鋼(こうちょうりょくこう)
引っ張り強さが非常に高く(高強度)、通常の鋼材よりも薄くても同等の強度が得られる鋼材。橋梁、圧力容器、車両などに使われるが、溶接時は熱影響部(HAZ)の低温割れや硬化に特に注意が必要で、予熱が欠かせない場合が多いよ。
硬化(こうか)
溶接部の加熱と急激な冷却によって、金属の組織が変化し、硬度が増す現象。硬化が起こると、同時に靭性(ねばり強さ)が低下し、低温割れなどの脆性(ぜいせい)破壊の原因になりやすいため、予熱やパス間温度管理で制御されるよ。
交差(こうさ)
T字、十字、L字など、複数の部材が組み合わさり、その角や面を溶接する継手の形状。応力集中や熱ひずみを考慮した溶接順序(溶接パス順)が特に重要になるよ。
コールドスタート
溶接開始の始端部において、溶接電流が設定値に達するまでの時間や、ワイヤの送給速度の立ち上がりが遅れることなどにより、ビードの溶け込みが不十分になったり、形状が不安定になったりする現象。
後熱(ごねつ)
溶接後、部材をいったん冷ましてから再加熱し、ゆっくり冷却させる熱処理のこと。
特に高張力鋼や厚板では、溶接直後の熱影響部(HAZ)に残った水素を拡散させ、低温割れを防ぐために行われるよ。加熱温度や保持時間は材料ごとに決められていて、重構造物では重要な品質管理の工程なんだ。
クラック
溶接金属または母材に発生した割れ目のこと。強度に重大な影響を与える最も深刻な欠陥。溶接直後に発生する高温割れと、冷えた後に発生する低温割れに大別されるよ。
クレーター
溶接を終えた終端部に、溶融池が冷え固まる際に金属が収縮することでできる、皿状のくぼみのこと。このクレーターの底に割れ(クレーター割れ)が発生しやすいため、クレーター処理(電流を徐々に絞るなど)が重要。
🧼 溶接用語集(サ行)
再溶融(さいようゆう)
一度溶接して冷え固まった溶着部を、再度アークやトーチなどで加熱して溶かし直す操作。継ぎ足しや補修、あるいは多層溶接で下層のビードと上層を馴染ませるために使われるよ。
サニタリー配管
食品、飲料、医薬品、化粧品工場など、極めて高い清潔性が求められる場所で使用される配管。溶接はTIG溶接が主で、特に内面ビードは段差や隙間がないように滑らかに仕上げられ、しばしば研磨(バフ掛け)まで行われるよ。
サブマージアーク溶接(SAW)
粉状のフラックス(粒状)を盛り、その中にワイヤ電極を埋没させて行う全自動溶接法。アークが外部から見えないのが特徴。非常に高い入熱が可能で、厚板や長尺物(造船、橋梁、圧力容器など)の溶接に強く、高い溶着効率を誇るよ。
酸化
溶接時に、溶融した金属が空気中の酸素と化学的に結合してしまう現象。シールドガスの流量不足、風によるシールドの乱れ、あるいは母材表面の汚れなどが原因で起こりやすく、ビードの見た目や強度を大きく低下させるんだ。
磁気吹き(じきぶき)
アーク溶接中に、母材や治具に残った磁気の影響でアークが引っ張られて曲がる現象。
直流溶接(DC)で特に起こりやすく、アンダーカットや溶け込み不足などの欠陥につながるんだ。
アース位置の変更や電流調整で対策するよ。
遮光面(しゃこうめん)
アーク溶接の際に発生する紫外線・赤外線や、目を焼く強烈な光から、作業者の目と顔を守るための保護具。現在は自動遮光式が主流で、アークが発生すると瞬時にレンズが暗くなるため、作業効率が高いよ。
シールドガス
溶接中の溶融池(溶けている金属のプール)を、空気中の酸素や窒素などの有害な成分から守る(シールドする)ために、トーチから吹き付けられる不活性または半不活性なガスのこと。主にアルゴン、CO2、またはそれらの混合ガスが使われるよ。
ショートアーク
主に半自動溶接(MAG/MIG)で、ワイヤ電極が母材と断続的に短絡(ショート)しながらアークを発生させる溶接状態。比較的低い電圧設定で起こり、溶着金属の移行が細かくなるため、薄板溶接や立向き溶接などの細かい作業に適しているよ。
シーム溶接
主に抵抗溶接の一種で、部材を重ね合わせ、回転する円盤状の電極(ローラ電極)で挟み込みながら連続的に通電し、線状の溶接(シーム)を行う方法。水密性や気密性が必要なタンクや缶の製造に使われるよ。
自動溶接
作業のほとんどをロボットや専用装置によって行う溶接作業。大量生産や、長尺物の溶接、均一な品質が求められる場合に採用されるよ。人間が操作する手溶接や、半自動溶接と対比されることが多いんだ。
スカラップ
構造物の柱・梁などの仕口部で、部材どうしが交差する部分にあらかじめ設けられる半円形(または半楕円形)の切り欠きのこと。
施工上は、裏当て金の除去や裏はつりを行うための作業スペースを確保したり、溶接線が入り組んで作業しにくい部分を避ける目的で設けられるよ。昔は応力集中の緩和も目的のひとつとされていたけれど、実際にはスカラップ自体が応力集中の原因となる場合があるため、近年の建築鉄骨では“ノンスカラップ工法”が主流になっているんだ。
スパッタ
溶接中に飛び散る、溶融金属の小さな粒のこと。母材やノズルに付着すると外観を損ねるだけでなく、後処理の手間もかかるよ。電流や電圧、アーク長が不適切な場合に発生しやすくなるんだ。
スパッタ防止剤
溶接前に、母材の溶接線近傍やトーチのノズルに塗布・スプレーすることで、スパッタが付着するのを防いだり、付着しても簡単に除去できるようにするための薬剤。
隅肉多層盛り(すみにくたそうもり)
T字継手などの隅肉溶接において、必要な脚長(すみ肉のサイズ)が大きくなる場合、一度のパスで無理に仕上げようとすると、溶融池が垂れたり、欠陥ができたりしやすいんだ。
そのため、ビードを重ねて何回かに分けて溶接し、規定のサイズまで盛り上げていく技術のことを隅肉多層盛りというよ。
最初の層をルートパスとして溶け込みを重視し、その後、ウィービングやストレートパスでビードを積み上げていき、隅肉の強度と形状を確保するんだ。
また、一発大電流で仕上げるのに比べて、パスを分けて施工することで入熱やパス間温度を管理しやすくなり、条件をきちんとコントロールすれば、割れや過大な変形のリスクを抑えやすいというメリットもあるよ。
清浄化
溶接の前に、母材の表面に付着している油、水分、錆、塗料、スケール(酸化皮膜)などを徹底的に取り除く作業。この清浄化が不十分だと、ブローホール(気泡)や酸化、不完全溶け込みなどの欠陥の原因となるから、品質確保の基本中の基本だよ。
セラミックバック
主に配管のTIG溶接などで、裏側からビードをきれいに安定して形成するために、裏側に当てがう耐熱性のセラミック材。裏波の形成がしやすくなり、バックシールドガスの代わりに使われることもあるよ。
全姿勢溶接
溶接作業におけるすべての姿勢(下向き、立向き、横向き、上向きなど)で行う溶接のこと。この全姿勢での溶接技術は、溶接技能者がその高い技量を証明するための試験項目にもよく取り入れられているんだ。
反り(そり)
溶接の熱収縮によって、部材が平面から湾曲して変形してしまう現象。寸法不良の主要な原因となるため、拘束(クランプ)や溶接順序の工夫で対策されるよ。
🌡️ 溶接用語集(タ行)
ダウンスロープ
TIG溶接や、一部のインバータ式の半自動溶接機に搭載される機能で、溶接終端でアークを切る際に、電流を急にゼロにせず、設定した時間をかけてゆっくり下げていく制御のことだよ。
電流が滑らかに落ちていくことで、溶融池が急激に収縮せず、クレーター割れを防ぎやすくなるんだ。
特にTIG溶接では、安定した終端処理と外観品質のために欠かせない機能だよ。
タック溶接(Tack Welding)
仮付け溶接を指す言葉で、現場では「タック」「タック打ち」と呼ばれているよ。本溶接に入る前に、部材を設計通りの位置・角度に合わせて、短いビードを点状に数カ所入れて一時的に固定する作業のこと。タックが弱いと溶接中にズレたり開先が変形したりしやすく、逆に過度に強いと後で取り除きにくいこともあるから、長さ・間隔・溶け込みの深さを適切に調整するのが技術なんだ。このタック溶接の精度が、本溶接での溶け込みや寸法精度、仕上がりの良し悪しを大きく左右する、とても重要な前準備工程だよ。
タップ溶接(断続溶接)
溶接線を連続ではなく、一定の長さごとに“溶接する部分”と“溶接しない部分”を交互に配置して行う溶接方法。
強度がそれほど厳しく求められない箇所で、**施工時間の短縮や溶接量の削減(省力化)**を目的に採用されるよ。また、連続溶接に比べて入熱量が小さくなるため、結果的に歪みが出にくいというメリットもあるんだ。
主に隅肉溶接や長尺の薄板構造物などで用いられ、必要な強度と施工性のバランスをとるための手法として現場でよく使われるよ。
立向き溶接(たてむきようせつ)
溶接線が鉛直方向(上下)にある継手を溶接する方法。下から上に進める上進法(うえしんほう)と、上から下に進める下進法(したしんほう)があるよ。溶融金属が重力で垂れやすいため、特に上進法は難易度が高め。
多層溶接(たそうようせつ)
開先が深く、一度の溶接(一層)では溶着金属で埋まらない場合に、溶接金属を何層にも分けて積み重ねて溶接する方法。厚板の溶接では一般的な手法で、層ごとのパス間温度管理が品質保持の鍵になるよ。
端部処理(たんぶしょり)
溶接線の終わり際を、欠陥(クレーター割れなど)なく、きれいに仕上げるための技術。溶接電流を徐々に絞る(クレーター処理)など、本溶接部と同じく強度と見た目に直結する重要な技術だよ。
チッピング
溶接後にビード上に固まったスラグを叩いて除去する作業のこと。
被覆アーク溶接やSAWでは必ずスラグが発生するため、次の層を溶接する前や仕上げ時に、このチッピングで取り除く必要があるよ。
突合せ継手(つきあわせつぎて)
二つの部材の端面同士を突き合わせて一直線に溶接する、最も基本的な継手形状。部材の厚みによっては開先を設け、完全溶け込みを目指すよ。
点付け(てんづけ)
仮付けと同じ意味で使われることが多いよ。本溶接前の位置決めと、熱による歪みを抑えるための、短く、間隔をあけて行う一時的な溶接のこと。
テンパーカラー
ステンレス鋼などの金属表面を熱すると出現する、玉虫色や青色などの酸化による変色のこと。溶接の熱影響を示すもので、特にサニタリー配管などでは、この色が残っていると耐食性(錆びにくさ)が低下するため、酸洗いや研磨(焼け取り)で除去が必須とされるよ。
ティグ溶接(TIG)
Tungsten Inert Gas weldingの略。溶けないタングステン電極を使い、アルゴンガスなどの不活性ガスでシールドしながら、アーク熱で溶接する高品質溶接法。薄板やステンレス、アルミなど、高精度な仕上がりが求められる溶接で活躍するよ。
定格出力
溶接機が、規定された使用率(連続して運転できる時間の割合)に基づいて、安定して連続供給できる最大の電流(電力)の上限値。機器選定時や、作業負荷を考える際の基本指標となる数値だよ。
トーチ
TIG溶接や半自動溶接において、電極やワイヤを保持し、アークを発生させると同時に、シールドガスを供給するための道具。作業者が手に持って操作する部分だよ。
溶け込み
溶接ビードの下にある溶着金属が、どれだけ深く母材と一体化して溶融しているかを示す度合い。
ここが不足すると強度不足(不完全溶け込み)になり、内部欠陥の主要因になるんだ。
溶接条件(電流・電圧・速度・アーク長)で大きく左右されるため、内部品質を判断する最重要ポイントとされているよ。
💡 ナ行
ナメ付け
部材の角や表面に沿って、溶加材(フィラーワイヤ)をほとんど使わず、またはごく少量で、母材自身を溶かして軽くビードを置くような溶接。薄板の装飾的な溶接や、密着重視で強度はあまり求められない場合に用いられるよ。
軟鋼(なんこう)
炭素含有量が低め(約0.3%以下)で、加工しやすく、溶接性にも優れている鋼材。最も一般的に使用されており、一般構造物や建築、機械部品などに多用されるよ。
2次加工
溶接という接合工程が終わった後に、製品を完成させるために行われる追加の処理工程のこと。具体的には、溶接ビードの研磨、スパッタの除去、塗装、開先取り直し(補修)、あるいは熱処理などが含まれるよ。
入熱管理
溶接部に加える熱量(入熱)を、材料の板厚や種類に応じて適切にコントロールする技術。電流、電圧、溶接速度のバランスを調整して、過大な変形(歪み)や、金属組織の劣化(割れや靭性低下)を防ぐための、品質管理の要となる技術だよ。
二層目
多層溶接を行う際、一層目(ルートパス)の次に溶接する層。下層のビードと完全に融合させることや、適切な層間温度を保ちながら、開先全体を均一に埋めていく作業が求められるよ。
🛡️ ハ行
バックシールド
主にTIG溶接で、ステンレス鋼やチタンなどの反応性が高い金属を溶接する際、溶融池の裏側からもシールドガス(アルゴンなど)を供給して、裏波が大気に触れて酸化するのを防ぐ方法。高品質で耐食性が高い裏波を形成するために不可欠な措置だよ。
パス間温度
多層溶接において、前の層を溶接し終わってから、次の層を溶接し始めるまでに測定される、溶接部の温度のこと。この温度が高すぎると組織が脆化し、低すぎると割れの原因となるため、材料ごとに適切な温度範囲が定められているよ。
火花(ひばな)/ スパッタ
アーク溶接やグラインダー作業中に、溶融した金属が飛び散って空中で燃焼する小さな火の粉のこと。周囲の燃えやすい物への引火や、作業者の皮膚・目への損傷を防ぐため、防火対策と保護具(皮手袋、溶接服など)の着用が必須。
バフ掛け
溶接ビードやその周辺を、バフ(布やフェルトなどの研磨材)を使って鏡面のように光沢のある状態まで磨き上げる仕上げ作業。特にサニタリー配管や、外観の美しさが重視される製品で重要な工程だよ。
パルス電流(パルスでんりゅう)
溶接時に、電流を「ピーク電流(大電流)」と「ベース電流(小電流)」の間で周期的に切り替えて制御する方法。ピークでしっかり溶かし、ベースで熱量を抑えることで、アークが安定し、溶融池のコントロールがしやすくなるよ。TIG溶接では、入熱を抑えつつ必要な溶け込みを確保したいときや、裏波を安定させたい場面でとても有効なんだ。
パルス幅(パルスはば / デューティ比)
ピーク電流が流れている時間の割合のこと。
パルス幅を長くすると、ピーク電流が作用する時間が増えるため、溶け込みを確保しやすくなる一方、
短くするとピーク時間が減るため、入熱を抑えやすくなるよ。
主にTIG溶接で調整されるパラメータだよ。
パルス周波数(パルスしゅうはすう)
パルス電流の「ピーク ↔ ベース」の切り替えを、1秒間に何回繰り返すかを表す値。単位はHz。
低周波だと、ビード表面に“鱗”のような模様がはっきり出て、
高周波にすると、ビードが滑らかで均一になりやすいんだ。
材料や溶接姿勢に合わせて最適な値を選ぶと、見た目も品質も安定するよ。
ビード
溶接によって盛り上がった、溶着金属の線状の部分。その幅、高さ(余盛)、均一性などで、溶接の技術レベルや品質が見て取れるよ。
ピーニング
溶接後のビードや周囲をハンマーやエアハンマーで軽く叩き、塑性変形によって引張応力を和らげる操作のこと。歪みや割れ(特に疲労割れ)の発生を抑える目的で使われるけど、叩きすぎると逆効果になるため、適度な加減が重要なんだ。
歪み(ひずみ)
溶接時の急激な加熱と、それに続く冷却による収縮によって、材料の寸法や形状が変形してしまう現象。溶接入熱の管理、仮付けの工夫、そして溶接の順番(溶接順序)を工夫することで、その発生を最小限に抑える技術が求められるよ。
不完全溶け込み
溶接金属が開先の底や母材と、規定通りにしっかり融合しておらず、溶け込みが不足している状態。強度低下を引き起こす重大な欠陥で、非破壊検査などで厳しくチェックされるよ。
ブローホール
溶接中に溶融池に閉じ込められたガスが、固化する際に抜けきらずに内部や表面にできる穴(気泡)のこと。シールド不良や、母材の錆・汚れ・水分が原因で発生しやすく、見た目も強度も大きく影響するよ。
フラックス
被覆アーク溶接棒の被覆材や、サブマージアーク溶接(SAW)で使われる粉末状の粒材のこと。アーク熱で分解・溶融し、スラグやシールドガスを発生させて溶融池を保護したり、金属の成分を調整したりする役割を持つよ。
フィラーワイヤ
TIG溶接やMAG/MIG溶接などで、接合部に溶かし加えて充填する金属棒やワイヤのこと。溶接金属の体積を補い、強度を確保するために母材と同じ、または近い成分のものが使われるよ。
放射線透過試験(RT)
非破壊検査(NDT)の一種で、溶接部にX線やガンマ線などの放射線を透過させ、フィルムに焼き付けてレントゲン写真のように内部の状態を調べる検査。ブローホールや割れ、スラグ巻込みなど、内部欠陥の有無を視覚的に確認できる、信頼性の高い検査方法だよ。
非破壊検査(NDT)
部材を壊したり、傷つけたりせずに、内部や表面の欠陥の有無、健全性を調べる検査方法の総称。**RT(放射線透過試験)、UT(超音波探傷試験)、PT(浸透探傷試験)**などがあるよ。
フレア溶接
丸棒やパイプなどの曲面と板材が交わる部分にできる自然な窪み(フレア)を開先として利用する溶接法。
代表的なのは、丸棒と板材の接合に使うフレア隅肉溶接と、丸材同士の接合に使うフレア突合せ溶接だよ。
開先加工が不要で手軽だけど、溶け込み不足になりやすいため、電流や溶接速度の管理がとても重要なんだ。
母材温度
溶接を始める前に測定される材料(母材)の温度。特に高張力鋼などの割れやすい材料や厚板では、溶接前に母材をあらかじめ温めておく(予熱)必要があるため、この温度管理が非常に重要だよ。
✨ マ行
マグ溶接(MAG)
Metal Active Gas welding の略で、CO₂ または Ar+CO₂ 混合ガスを使う半自動溶接法。
溶着速度が速く、被覆アーク溶接より効率が高いため、建築・橋梁・車両などの鉄鋼構造物で最も広く使われている溶接だよ。アークが安定して扱いやすく、厚板から中板まで幅広く対応できるのが特徴なんだ。
マルチパス溶接
多層溶接と同義で使われることが多いよ。ひとつの開先に対して、溶着金属を複数の層(パス)に分けて重ねて施工する方法。特に厚板の溶接では、歪みの抑制や十分な溶け込みを確保するために多用されるよ。
前処理
溶接作業を始める前に、品質を確保するために行う一連の準備作業。脱脂、清掃(錆落とし)、開先加工、仮付けなどがこれにあたり、この工程の良し悪しが溶接品質を大きく左右するよ。
ミグ溶接(MIG)
Metal Inert Gas welding の略で、アルゴンやヘリウムなど不活性ガスを使う半自動溶接法。
ワイヤ電極が溶けながら溶接する方式で、ガスが不活性だからスパッタが少なく仕上がりがきれいなんだ。
アルミやステンレスなど、非鉄金属の高品質溶接に向いていて、熱影響が小さく歪みを抑えやすいのも特徴だよ。
目違い(めちがい)
溶接する部材同士の面や高さが、設計通りにピッタリ揃っておらず、段差ができてしまっている状態。外観不良になるだけでなく、溶接部に余計な応力集中を引き起こす原因になるため、位置合わせの段階で修正する必要があるよ。
🎨 ヤ行
焼入れ(やきいれ)
鋼材をオーステンパー温度(約800〜950℃)まで加熱し、その後水や油で急冷して、マルテンサイトという非常に硬い組織に変える熱処理のこと。硬度を大きく上げるのが目的だけど、一方で脆くなるため、通常は後工程で焼戻しを行うよ。
溶接部の熱影響部(HAZ)でも、急冷条件によってマルテンサイト化が起こり、意図せず“焼入れに近い硬化”が生じる場合があるんだ。
焼なまし(やきなまし)
鋼材を加熱してしばらく保持し、その後炉の中でゆっくり冷やす熱処理。内部応力の除去、組織の均一化、軟化による加工性の向上、靭性改善が目的。
溶接後に行われる「応力除去焼なまし」もこの一種で、歪みや残留応力を減らすために使われるよ。
焼ならし(やきならし)
鋼材を加熱した後、大気中で空冷して組織を均一化する処理。焼なましより空冷が速く、結晶粒を整え、機械的性質を安定させる効果があるよ。
母材の製造工程でよく行われる処理で、溶接後に現場で実施するケースは比較的限られているんだ。
焼戻し(やきもどし)
焼入れで硬く・脆くなった鋼材を、150〜650℃の範囲で再加熱し、靭性を回復させる熱処理。
低温では応力除去、高温では強度と靭性のバランス改善が目的。焼入れとセットで使われることで、硬さと粘り強さの両立が実現するよ。
焼け
溶接時の熱によって、特にステンレス鋼の表面に出る黒っぽい、または青っぽい変色のこと(テンパーカラーとも言う)。これは表面の酸化膜が変化したもので、この部分の耐食性(錆びにくさ)が低下するため、サニタリーなどでは酸洗いや研磨で除去(焼け取り)が必要だよ。
溶接記号
設計図面上で、溶接の位置、種類、開先形状、サイズ、仕上げ方法など、溶接に関するすべての指示を簡潔に、国際的なルール(JIS、ISOなど)に基づいて記した図形的なマークのこと。これを見るだけで、どんな溶接をすべきかがわかる、溶接の共通言語だよ。
溶接姿勢
溶接を行う際の、作業者がトーチを進める方向と、溶接線の空間的な向きを組み合わせた分類。主に下向き(最も楽)、立向き、横向き、上向き(最も難しい)の4つがあり、姿勢によって溶接条件や難易度が大きく変わってくるよ。
溶接速度
単位時間あたりにビードをどのくらいの速さで進めるかを示す速度。速すぎると溶け込みが浅くなったり、遅すぎると入熱過多で歪みが大きくなったりするため、電流・電圧とのバランスが非常に重要だよ。
予熱
溶接を始める前に、母材の接合部周辺をあらかじめ温めておくこと。特に厚板、高張力鋼、低温環境下での溶接において、溶接後の急冷を防ぎ、低温割れや硬化を防ぐために非常に効果的で、品質管理の必須項目だよ。
余盛(よもり)
溶接によって、必要な溶着量を超えてビードが盛り上がりすぎた状態。過度な余盛は応力集中の原因になることもあるため、通常は規定の高さに収める必要があり、高すぎる場合は削って仕上げることもあるよ。
📏 ラ行
ラップ溶接
部材同士を少し重ね合わせて、その重なり合った部分の角を溶接する方法。重ね継手とも呼ばれるよ。薄板の溶接でよく使われるが、重ね代の部分に水や汚れが溜まると錆びやすくなる(隙間腐食)点や、焼けに注意が必要だよ。
ルートギャップ
突合せ継手の開先形状において、溶接する二つの部材の一番奥(ルート部)の間に設ける隙間の幅のこと。この隙間が広いほど溶け込みや裏波が出やすい反面、溶融金属が抜け落ちる(落ち込み)リスクも高まるため、溶接法や板厚に応じて適正な寸法が決められているよ。
ルートフェイス
開先の形状において、開口部の最下部に残す、削られていない平面の部分の厚みのこと。このフェイスの厚さが裏波の形成のしやすさや、溶接部の初期強度に大きく関わる、開先設計の重要なポイントだよ。
レントゲン検査
放射線透過試験(RT)と同義。X線やガンマ線を使って溶接部の内部を透視し、目には見えない内部欠陥(ブローホール、割れ、スラグ)の有無をフィルム上で視覚的に確認する非破壊検査の俗称だよ。
レーザー溶接
高出力のレーザー光を熱源として金属を溶融させる溶接法。入熱が非常に小さく、溶接速度が速いのが特徴で、歪みが少なく、薄板や精密機器の溶接に適しているよ。
ローリング溶接(ろーりんぐようせつ)
TIG溶接で、タングステン電極を指先で転がすように回しながら前へ進める運棒操作のこと。
電極角度を一定に保ちやすく、アークの向きが安定するため、裏波を出しやすい・ビード形状が乱れにくいというメリットがあるよ。ただし、狭い開先や姿勢が悪い場所では、むしろストレートのほうが安定することもある。ローリングはあくまで「場面に応じたテクニックの一つ」で、固定配管などの姿勢を維持するのが難しい場面でよく使われるよ。
⚙️ ワ行
割れ(われ)/ クラック
溶接金属または母材の熱影響部(HAZ)に発生する亀裂のこと。強度に重大な影響を与えるため、最も深刻な欠陥とされるよ。溶接直後の高温で発生する高温割れと、冷却後に発生する低温割れに分けられ、それぞれ原因と対策が異なるんだ。
ワイヤ送給
MAG/MIG溶接などの半自動溶接機において、溶加材となるワイヤを、一定の速度でトーチの先端まで連続的に供給する装置や動作。この送給速度がアーク長(電圧)や電流を決める重要な要素となるよ。
ワーク
溶接や加工の対象となる材料、部品、または製品そのもののこと。「加工対象物」とも訳され、治具(溶接台や固定具)にセットされて作業されるものを指すことが多いよ。
以上、あいうえお順でまとめた溶接用語200語でした! 現場で飛び交う言葉の意味を、いつでもここで確認してね。
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この記事の内容は、現場で長く溶接に関わってきた経験をベースにまとめてるよ。
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