溶接用語集|あいうえお順で覚える“現場のことば”

溶接の世界では、独特な言い回しや専門用語がバンバン飛び交う。 この用語集では、そんな“現場用語”をあいうえお順でまとめて紹介していきます。

「なんとなく聞いたことあるけど意味が曖昧」 「現場で飛び交ってるのに、ついていけない…」 「普通にド忘れ」そんなときに、サッと調べてパッと分かるような、頼れる辞書ページを目指してます。 ※随時追記中

ア行

アーク
電極と母材のあいだにできる放電現象。これが金属を溶かす熱源になる。

アークスタート
溶接の始点でアークを発生させること。TIGではHFスタートやリフトスタートがある。

アークストライク
意図しない場所でアークを飛ばしてしまうこと。外観不良や欠陥の原因になる。

アーク溶接
電気のアークを熱源にして金属を接合する溶接法。最もポピュラーな方式のひとつ。

アンダーカット
溶接金属の端が削れたようにえぐれてしまった状態。強度不足になる欠陥の代表例。

アルゴンガス
TIG溶接などで使う不活性ガス。空気の侵入を防ぎ、ビードをきれいに仕上げる。

圧接(あっせつ)
加熱+圧力で金属を接合する方法。摩擦圧接や鍛接もこの仲間。

板厚(いたあつ)
材料の厚み。薄板・中板・厚板で求められる技術や準備も変わってくる。

イグニッション
アークを発生させる“着火”のイメージ。自動TIGでは高周波で始まることが多い。

位置合わせ
溶接前に部材同士の位置をピッタリ合わせる作業。ズレると歪みの原因になる。

一層目(いっそうめ)
多層溶接の最初の層。ここがキレイにできないと、あとが全部台無しになる。

入熱(にゅうねつ)
溶接部に加わる熱量のこと。入熱が多すぎると変形・ひずみの原因に。

ウィービング
トーチや棒を左右に振りながら溶接する操作方法。幅広くビードを作るときに使う。

裏波(うらなみ)
完全溶込み溶接で、裏面に現れるビードの盛り上がり。きれいに出ると職人っぽい。

エンドタブ
試験片の端に取り付ける金属板。アークスタートや終端処理の安定化に使われる。

オーバーラップ
溶けた金属が母材にうまく融合せず、上に乗っているだけの状態。これも欠陥。

オリフィス
ガスや液体が通る細い穴や開口部のこと。溶接ではノズルの出口部分やガス制御の部品として登場し、シールド性や流量に影響を与える。

カ行

開先(かいさき)
厚板を溶接しやすくするために削って作るV字やU字の溝。

仮付け(かりづけ)
本溶接前に軽く止めておく溶接。ズレ防止に重要。

乾式溶接棒
乾燥状態を保った溶接棒。吸湿すると欠陥の原因に。

可搬式(かはんしき)
持ち運び可能な機械や装置。現場作業で重宝される。

仮組み(かりぐみ)
溶接前に一時的に部材を配置して形を確認する工程。

母材(かざい)
溶接される元の材料。溶加材に対しての呼び名。

火花(ひばな)
アークやグラインダーで飛び散る火の粉。安全対策必須。

硬化(こうか)
溶接後に金属が硬くなる現象。脆くなる原因にも。

交差(こうさ)
T字や十字など、部材が交わる部分の溶接形状。

コールドスタート
始端部でビードが不安定になる現象。設定ミスや送給遅れが原因。

こて先
半田付けなどに使う工具の先端部。精密作業で活躍。

サ行

再溶融(さいようゆう)
一度冷えた溶接部を再加熱して溶かし直す操作。継ぎ足しや補修に使われる。

サニタリー配管
清潔さが求められる食品・薬品工場で使う配管。内面ビード処理や研磨が必須。

サブマージアーク溶接
粉状のフラックスの下で行う自動溶接。厚板・長尺物に強く、造船などで活躍。

酸化
金属が酸素と反応すること。シールド不良や母材の汚れで起こりやすい。

遮光面(しゃこうめん)
アークの強烈な光から目を守るための防具。自動遮光式が主流。

シールドガス
溶接中の溶融池を大気から守るガス。主にアルゴンや混合ガスが使われる。

ショートアーク
ワイヤが短く接触して発生するアーク。低電圧で細かい溶接に向く。

歪み(ひずみ)
溶接の熱と冷却で材料が変形する現象。対策には段取りと順序が重要。

自動溶接
ロボットや装置による溶接作業。大量生産や均一品質に強い。

スパッタ
溶接中に飛び散る金属粒。見た目も悪く、後処理も必要。

スパッタ防止剤
スパッタの付着を防ぐスプレーや液体。ノズルや母材に塗布する。

清浄化
溶接前に母材表面をきれいにする作業。脱脂・研磨が中心。

セラミックバック
裏波を安定して出すための耐熱材。配管TIGでよく使われる。

全姿勢溶接
下向き・立向き・上向きなどすべての姿勢で行う溶接。技能試験にもよく出る。

タ行

高張力鋼(たこうちょうこう)
引っ張り強度の高い鋼材。溶接時は割れに注意が必要。

立向き溶接
下から上に向かってビードを進める。重力に逆らうため難易度高め。

多層溶接
一度に厚みが埋まらない場合、何層にも分けて溶接する方法。

端部処理
溶接の終わり際をきれいに仕上げる技術。強度と見た目に直結。

突合せ継手
部材同士を端面で突き合わせて溶接する基本形。完全溶込みが目標。

点付け
本溶接前の仮止め。歪みを抑える要。

テンパーカラー
加熱により表面に出る酸化の色。焼け取りの判断材料にもなる。

ティグ溶接(TIG)
タングステン電極を使い、アルゴンガスでシールドする高品質溶接法。

定格出力
溶接機が安定して供給できる電力の上限。機器選定時の基本指標。

トーチ
電極やワイヤを保持しアークを発生させる道具。TIGや半自動で使う。

ナ行

ナメ付け
部材の角や表面にそって軽くビードを置くような溶接。装飾や密着重視。

軟鋼(なんこう)
炭素含有量が低めで、加工しやすい鋼材。一般構造に多用される。

2次加工
溶接後の研磨・塗装・開先取りなど、追加の処理工程。

入熱管理
適切な温度・電流・速度のバランスで、歪みや欠陥を防ぐ技術。

二層目
多層溶接の2段目。下層との融合を意識した作業が求められる。

日常点検
機器やガスの状態を毎日確認する安全活動。溶接の基本中の基本。

ハ行

バックシールド
裏側からもガスで守る方法。ステンレス配管などに使われる。

パス間温度
多層溶接で各層間に温度を測る。熱の蓄積による欠陥を防ぐ。

母材温度
溶接前の材料温度。必要に応じて予熱することで割れを防ぐ。

バフ掛け
研磨仕上げの作業。サニタリー配管や外観重視の部品で重要。

反り(そり)
溶接後に材料が反ってしまう変形。寸法不良の原因になる。

ビード
溶接で盛り上がった部分。形状や幅で技術が見える。

溶け込み
ビードがどれだけ母材と一体化しているか。内部品質の指標。

不完全溶け込み
溶接金属が母材にしっかり入っていない状態。強度不足の原因。

ブローホール
ガスが抜けきらずにできる穴。見た目や強度に大きく影響。

フラックス
溶接中にスラグやガスを発生させて保護する被覆材。

フィラーワイヤ
溶接中に加える金属棒(溶加材)。母材の補助として使われる。

放射線透過試験(RT)
レントゲンのように内部を透かして欠陥を確認する非破壊検査。

非破壊検査(NDT)
壊さずに内部の状態を調べる検査方法。UTやPT、RTなどがある。

平板
平らな形状の板材。溶接試験でよく使われる標準素材。

マ行

マグ溶接(MAG)
CO2や混合ガスを使った半自動溶接。構造物や量産品で多く使われる。

マルチパス溶接
ひとつの継手に複数のビードを重ねて施工する方法。厚板で多用。

前処理
溶接前に行う脱脂・清掃・面取りなど。品質確保の基本。

目違い(めちがい)
溶接部で部材の面や高さがズレて揃っていない状態。段差になっており、外観不良や応力集中の原因になる。

ヤ行

焼け
金属表面に出る熱による変色。サニタリーでは要除去。

溶接記号
図面に記された溶接の指示マーク。JISルールに基づく。

溶接姿勢
作業時の姿勢や方向。下向き・立向き・横向き・上向きなど。

溶接速度
ビードを進める速さ。速すぎても遅すぎても不良につながる。

予熱
母材を事前に温めておくことで、割れや歪みを防止する。

余盛(よもり)
ビードが盛りすぎた状態。削って仕上げることもある。

ラ行

ラップ溶接
部材を重ねて溶接する方法。重ね代や焼けに注意。

ルートギャップ
突合せ継手の開口幅。溶け込みと裏波に影響する。

ルートフェイス
開先の最下部に残す未開削部分。裏波形成や強度に関わる大事な設計ポイント。

レントゲン検査
放射線透過試験と同義。欠陥の有無を視覚的に確認できる。

レーザー溶接
高出力レーザーで行う高精度な溶接。薄板や精密機器に適している。

ワ行

割れ
母材やビードに発生するクラック。強度に重大な影響を与える。

ワイヤ送給
半自動溶接で溶加材を連続供給する装置。

ワーク
加工対象の材料や部品。治具にセットされて作業されるもの。


以上、あいうえお順でまとめた溶接用語200語でした! 現場で飛び交う言葉の意味を、いつでもここで確認してね。