遮光ガラスの色で溶接が楽になる
溶接って、無理な体勢で長時間やることが多いから、体も目もかなり疲れるよね。
腕や腰が悲鳴を上げてる人も多いと思うけど、そこはまあ、気合とサロンパスで何とかしよう。
ただ、目の疲れはちょっとした工夫でだいぶ楽になるよ。
驚きはないかもだけど遮光ガラスを変えるだけで世界が変わるってこと、けっこうあるんだ。
遮光ガラスは透過率によって濃さが違って、番号で言うと4番(かなり明るい)〜14番(真っ黒)まである。
普通の作業なら、8番〜12番あたりを使ってる人が多いんじゃないかな。
たとえば、半自動溶接で300Aとか流すと、10番以下の遮光ガラスじゃ眩しすぎて目が焼ける。
逆に、TIGで50Aぐらいしか出さないときに11番以上の濃いやつ使うと、溶け込みがまったく見えなくて神経すり減らす。
この“見えなさ”が積み重なると、1日の終わりにはもうヘトヘト。
だからこそ、作業に合わせて3種類くらい遮光ガラスを使い分けられるようにしておくと、目の負担はだいぶ減るんだ。
…と、ここまでは溶接やってるなら誰でも知ってる話。当たり前過ぎて偉そうに何語ってんだよって言われそうなんで本題へ。
番数については、現場でやってる人ならもう常識。
だから今回は、“遮光ガラスの色”にスポットを当ててみよう。
遮光ガラスの「色」で見え方が変わる
意外と知られてないんだけど、遮光ガラスって番数(濃さ)だけじゃなくて“色”でも見え方が変わるんだよね。
これは、濃さとはまったく関係ない別の要素。
では、実際に見てみよう。

緑系の視界
たぶん一番よく見かける色で、いわゆる「定番の遮光ガラス」ってやつだね。
緑は目に優しいって言われることもあるし、無難に使いやすい感じ。森の緑みたいに濃い緑やクリーミーな緑もある。この色しか知らない人が8割以上は居る気がするくらいTHE・定番だね。
使用感は「まろやか」、「ぼんやり」っていい方がハマるかな。細かい溶け込みとか溶接プールの形状を確認しようとすると、確認しずらい感じはある。繰り返すけど定番だからこれが普通、でもちょっと物足りないかもね。

黄色系の視界
画像ではやや薄めに見えるけど、実物はもっと黄みが強くて明るい。
これはもう、個人的にはナシ。完全に目がやられる系。
黄色は明るさを増幅する傾向があるから、アークの中心がボヤけて見えにくいんだよね。しっかり明るく見えたほうが良いグラインダー作業の保護メガネなら好みが別れるけど黄色もアリ、溶接だとメリット皆無。溶接中の視界は暗いからなるべく明るくしてあげよう!が裏目にでた感じ。似た使用感で赤系もある。素材がポリカで見かけるかも。これも、うーん・・好みかなぁ。僕は駄目だ。
これを「普通だ」と思って使ってる人は、ぜひ他の色を試してみて。
本当に違うから。

青系の視界
大事な場面で画像乱れてますが、実際はもっとシャープな見え方で、これが現場では最強に見やすい。
溶け込みもビードの盛り上がりもくっきり見えるし、何より目が疲れない。開先の母材表面とか視界で判断しにくい場面で違いがすごく感じられる。境界線がよく見えるって言い方が分かりやすいかな?特に繊細な溶接の場面で効果発揮できるから、TIGやアルミ溶接で活躍する色だね。クリーミーな色合いになるほど、ぼんやりするんだけど、緑は濃いほど見にくい、青は濃いほど見やすい。
遮光ガラスの色別 比較表
色 | 視界の特徴 | 作業時の疲労感 | 適した用途 |
---|---|---|---|
緑系 | 暗めで安定した視界。この色だけしか知らなくても全然問題ない。 | 普通 | TIG、レーザー、プラズマ溶接など無難にできる。 |
黄系、赤系 | 明るく感じるがコントラストが激弱。溶接には適していない。 | 疲れやすい | 無しと言いたい。ポリカ素材好きならどうぞ。 |
青系 | 高コントラストで溶け込みが見やすい。青系でしか見えない箇所がある。 | 疲れにくい | 半自動、被覆アークとか煙でる作業。または高電流だと違いが強く感じられる。TIG薄物も◎ |
青ガラス、欲しくても買えない?存在しない?
じゃあみんなとりあえず1回使ってみ?と勧めたいけど、問題はここから。
以前、溶材屋さんに「青の遮光ガラスが欲しい」と頼んだら、こう返ってきた。
> 「製造ロットによって色味が変わるんで、“青指定”ってのは無理なんですよー」
マジかぁ・・
青で販売してないから、たまたま青っぽく製造されたのが今あるやつなの?うわ、激レアじゃん。
というわけで、僕の作業環境ではこの青ガラスは1枚きりの伝説装備。
割ったら本気でへこんで寝込むやつ。
一度使ったら戻れない、それが青
もし、どこかで青ガラスを買える環境なら1回だけでも試してみてほしい。かなり前は表面がマジックミラーみたいに鏡のようなのがあって、それが青系の色だったんだけど、今は見かけない。出会う事すら激レアな青ガラス。
本当に違うから。
道具なんて、慣れれば何でもいいって思いがちだけど、視界の快適さは溶接にとって作業効率に最も直結するんだよね。
てな事で、メーカーさん量産期待してます。(お安くね)